【Jリーグ】ライター潤のJリーグ放浪記 – THE 国立 DAY – 王者決戦!FC町田ゼルビア vs ヴィッセル神戸

こんにちは、潤です!

2024シーズンも開幕し、スタートダッシュに成功したクラブとそうではないクラブの色合いも徐々に強くなってきました。昨シーズン低迷し、その低迷から脱出を図るクラブ。そして好調だった成績をさらに上回ろうとするクラブ。開幕に向けて進める歩みや背景もそれぞれ異なる中、各シーズン1カードしか生まれない「リーグ王者対決」が今節行われましたのでその様子をまとめさせていただきました。

目次

“王者”として迎える開幕

代表経験者も多く、名門マンチェスター・ユナイテッドFCなどでも活躍した元スペイン代表のフアン・マタ選手が出場機会を掴めないなど選手層が厚いだけでなく、意思疎通のとれた圧倒的な強度を誇るサッカーで初のJ1王者に輝いたヴィッセル神戸。

そして、開幕前に高校サッカー界の名将ではあるもののプロでの指導歴がなかった黒田剛さんが監督に就任し話題を呼ぶとJ1での経験豊富なミッチェル・デューク選手やエリキ選手などが加入し、勝負に徹したサッカーで着実に勝ち点を積み重ねてクラブ史上初のJ1昇格とともにJ2王者にも輝いたFC町田ゼルビア。

共に「王者」としてオフを過ごして迎えた2024年のJ1開幕。「J1王者」の名に恥じぬ強度の高いサッカーをアウェイの地でも披露し、昇格組のジュビロ磐田相手に勝利した神戸。初のJ1の舞台で終盤にフリーキックから追いつかれてドロー発進とはなったものの、退場者を出すまではリードも奪い理想通りの展開で「J1でも通用する」ことを示した町田。

そんなポジティブな様子を見出すことも多かった開幕戦を終えて7節終了時点で4位につけ、他クラブのマークも強まる中で連覇に向けて開幕から強さを見せた神戸。ですが、その神戸以上に好調ぶりを示したのが町田でした。7試合を終えて5勝1分1敗(※しかも1敗は今季いまだに無敗のサンフレッチェ広島)と好スタートを切ると「J2王者」が「J1首位」に輝き開幕期の主役に躍りでます!

もちろん簡単なことではありませんが、お互いに開幕期のこのペースを続けていければ優勝争いにおいての「6ポイントマッチ」だったとシーズン終了後に語ることになる可能性も十分に秘めた「首位」vs「4位」の上位対決となった昨シーズンの「リーグ王者対決」は「THE国立DAY」として国立競技場で行われることになりました。

「THE国立DAY」上位対決

昨シーズンのMVPかつ得点王に輝き、今シーズンも7節まで全試合先発出場を続けFC東京戦では直接フリーキックで決勝点を叩き出した大迫勇也選手が前節の負傷交代の影響もあって欠場となった神戸。一方で「AFC U23アジアカップ カタール2024」選出を受けて共に主力の平河悠選手、藤尾翔太選手が欠場となった町田。

上記のメンバーに加えて前節両クラブのGKが退場したことによって、VARの介入が当たり前となった近年のJ1でもなかなか珍しい事例として、「両クラブの正GKが不在」となり、試合前から両クラブのベンチワークが求められた一戦になりました。

ですが、苦しい台所事情の中でも昨年の両王者は層の厚さを見せます。出場枠が1しかないGKというポジションの中で、それぞれリーグ通算3桁の出場数を誇る町田GKの福井光輝選手と、神戸GKの新井章太選手が正GK不在のピンチを救うと共に正GKの座を射止めるチャンスを得ます。

そしてフィールドプレーヤーでは町田が背番号10のナ サンホ選手が開幕戦以来のスタメンに抜擢されると、一方の神戸も山内翔選手がプロ入り後初スタメンを飾り、キープレーヤー不在の一戦に臨みます。

そんな中始まった試合はキックオフから右サイドの連携から初スタメンの山内選手が開始16秒で早速ヘディングシュートを放ち町田ゴールを脅かします。

ですが、そこからホームの町田も反撃にでます。タッチラインからボールが出ればロングスローで、ゴールラインを出ればコーナーキックで神戸ゴールを脅かします。「勝利のために必要なスタイルに徹する」町田がJ1王者相手にも遺憾無くそのスタイルを発揮します。

一方スタイルが確立している分、分析しやすい面もあるためスタイルを変えてきたのは神戸でした。試合後には公式HPにて武藤嘉紀選手が「いつもはハイプレスをしますが、今回は相手の戦術に対して相手の良さを消しながら、僕らが(ボールを)取った時にはカウンターで出て行くのが、うまく功を奏したのかなと思います。」(引用:ヴィッセル神戸公式HP)と語ったように強度の高いハイプレスからのショートカウンターでチャンスを作る戦い方からロングスローなどで押し返される展開が繰り広げられる中でもホームチームに得点を許すことなくペースを譲りません。

要所要所での激しい競り合いがありながら、お互いに相手ゴールへ迫るも身体を張ったシュートブロックなどで得点を許さず0-0の時間が続きます。

しかしそんなこう着状態を破ったのは神戸初先発の山内選手でした!

前半40分を過ぎたあたりから複数回チャンスを作れていた中で迎えた前半45分。ハーフウェーライン付近から宮代大聖がペナルティエリア内までドリブルで運ぶと、そこからマイナスのパスに合わせた武藤選手のシュートはブロックされますがこぼれ球に反応した山内選手が落ち着いて弧を描くシュートを流し込み先制に成功します!

その後もアディショナルタイムに両クラブにシュートチャンスが訪れるなど試合がさらに動きそうな予感も漂いましたが、前半は0-1でアウェイの神戸がリードして折り返します。

迎えた後半、お互いに前半と同じメンバーで臨む中、リードを許している町田は60分に選手2人の交代で先に手を打ちます。ベンチの中で唯一のFW登録であった荒木駿太選手と、古巣戦となった安井拓也選手がピッチへと入り同点弾を狙います。

そして79分にも再度2選手を交代。190cmを超える長身攻撃的サイドバックの望月ヘンリー海輝選手とミドルシュートが武器でもある下田北斗選手がピッチに入ります。一方の神戸はその間、プロ初ゴールで先制点を奪った山内選手に代わってJリーグ通算300試合以上出場をする実績も十分なDFの本多勇喜が入るのみで大きなテコ入れをせず、引き続き最小得点差でのリードを保った状態が続きます。

THE国立DAY、町田のクラブ史上最多となる39,080人の入場者数を記録した中で負けられない町田は前半以上にスローインを含めたセットプレーを中心にチャンスシーンを作りますが得点にまでは至りません。

町田の圧力に対して、近くの席にいた神戸サポーターの方が「あと一点あれば安心できるのに」という本音も漏らしていた中でその願いが叶います。

エース大迫選手不在を感じさせない、「もう一人のエース」武藤嘉紀選手がコーナーキックのこぼれ球から豪快にシュートを放ち、そのボールがクロスバーに当たってゴールの中へ!89分に神戸がリードを2点にします!

ですがそこで終わらないのがJ2王者の意地。90+6分にドレシェヴィッチ選手が1点を返してホームのサポーターの目の前で再度1点差に詰め寄ります。

その後も残り短いアディショナルタイム内でコーナーキックのチャンスなどを作るももう一点は生まれず1-2で試合終了。

王者対決となった一戦は「J1王者」神戸が町田のスタイルを攻略して勝利!首位相手に大きな勝ち点3を奪う結果となりました。

試合を終えて

勝利に徹する極端なスタイルでネット上などでは賛否両論もあった町田。そんな町田が迎えた王者との一戦は「敗戦」という結果にはなりましたが、「J1王者相手にスタイルを貫いた」意味合いは大きく、自分たちの立ち位置を知る上で大事な指標になる一戦だったように思いました。

この敗戦により首位から陥落こそしたものの、ここまで初昇格から首位争いを繰り広げられていることはクラブが一つ上のステージへ駆け上がる上での自信にもつながるはずです。

一方、ここまでで敗れた試合数は「2」ですが、その「2」が昨シーズンJ1で3位かつ今シーズンも未だ無敗の「広島」と今回の「神戸」と、スタイルがわかりやすい分、個のレベルの高い相手に分析されると勝てないことは今後に向けての課題になります。そこでその課題と向き合った時に、それでもスタイルを貫くのか、それとも変化を伴っていくのか今後も注目していきたいと思います。

町田に加え、初勝利が天皇杯王者相手に「5-4」とインパクトを残して、6節・7節には2試合連続完封勝利を挙げたジュビロ磐田、そして試合終盤に怒涛の粘りから勝ち点を獲得する試合も数多くある東京ヴェルディの昇格組3クラブが現時点で降格圏に名を連ねることなく終えた開幕期。

ここから熾烈なJ2を勝ち抜いてきたチームの新たな、そして強い旋風を日本最高峰のリーグでも巻き起こすことを期待しています!

一方の神戸も昨年ハイプレスからのショートカウンターというスタイルでクラブ史上初のJ1王者に輝きながら、「J2王者」相手にスタイルを変えつつ対応する応用力の高さ、そしてその試合で首位相手に勝ち切る王者の風格。

なお、それを正GKと昨年のMVPかつ得点王が不在の中で見せつけ、その試合で初先発の選手が結果を残す好循環から生まれる層の厚さは今季新たなタイトルを獲得する上で心強い根拠になります。

「J1王者」として各チームから研究される中でそれをどう打開していくのか、この先が楽しみです!

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みやざき潤のアバター みやざき潤 元TVディレクター・Jクラブスタッフ

Jリーグ観戦が趣味です。
発言は個人の見解となります。

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