スポーツには「背番号」という文化がある。大抵の目的は選手の識別のためのもので、団体競技で採用される傾向にある。競技によってはポジションが推定できる場合もあり、高校野球では1~9、バスケットボールでは4~8、ラグビーでは1~15をポジションごとに振り分ける。一般的にサードなら5番、ポイントガードなら4番、ナンバーエイトはその名の示すとおり。この番号は使用してはいけない等のルールが厳格に定められている場合もある。
プロスポーツのシーンにおいては、番号に外的な意図のないもの、つまるところ選手が好きな数字を背番号に設定できることが多い。例えばプロ野球、Jリーグ、そして我らが卓球、Tリーグ。
今期で5年目のシーズンを迎えるTリーグにおいても、選手は背番号の印刷されたユニフォームを着用している。従来の卓球の試合では、選手は背中に名前や所属の入ったゼッケンを着用していたが、それに代わる形となる。もちろんポジションによる番号選択のしきたり等もないので、個人個人が好きな番号を選定している。そういった意味では、プロ野球やサッカー等と同じ文脈である。
4階に住んでいるから4番、名字から28番、誕生日だから、占いの結果……と理由は様々だが、中でも目立つのは「この番号を自分のものにする」という意気込みで付けられた背番号だ。大きい数字であることが多く、この点は他のスポーツともおおよそ共通しているのではないだろうか。
■1人しか選択していない番号(一部抜粋)
・#28 丹羽孝季
・#32 大藤沙月
・#37 松平健太
・#45 森園政崇
・#50 五十嵐史弥
・#69 戸上隼輔
・#75 橋本帆乃香
・#88 南波侑里香
・#94 町飛鳥
(Tリーグ2021-2022 4thシーズンの選手登録より、敬称略。)
反対に、1~20までくらいの数字を付けている選手は多く、チームのおおよそ半分はこれらの若い数字を背負っている。木下アビエル神奈川と九州アスティーダは所属選手の半数が1~20の数字を選択していたがこれは最も少なく、他のチームは1~20の背番号を選択する選手が50%以上、つまり過半数を上回っている。対して日本生命レッドエルフの選手は誰一人として20番以上の数字を選択していなかった。自身との関連付けのしやすさや数字の人気もさることながら、若い数字は主要メンバーのものであるという、他スポーツからのイメージも大きいのではないだろうか。もちろん所属する選手の数が野球やサッカーなどに比べてはるかに少ないという面も一つの理由として挙げておく。
■5名以上の選手が選択している番号
・#1 松島輝空 吉村真晴 上田仁 木原美悠 小塩悠菜 平野美宇 加藤美優
・#7 モーレゴード 田添健汰 柏竹琉 村松雄斗 石川佳純 鈴木李茄
・#8 宇田幸矢 麻生麗名 有延優希 面手凛 フォンティエンウェイ
・#12 吉田雅己 由本楓羽 安藤みなみ 塩見真希 三村優果
・#15 鈴木颯 神拓也 赤江夏星 鶴岡菜月 小塩遥菜
(Tリーグ2021-2022 4thシーズンの選手登録より、敬称略。)
かくいう筆者自身も新体連のチームでゼッケンをデザインした際、デザインこそ大きくはないが背番号の意匠を取り入れた。13番を背負って試合に臨んだが、他のチームメンバーの個性も知れて良い取り組みだったと思っている。
Tリーグ5thシーズン開幕の詳細はまだ公表されておらず、いわゆるストーブリーグの状態にあたる。8月13日、14日には新たな試みとして個人戦が開催される予定であり、直近で今季のTリーガーが我々ファンの前に現れるのは、今のところはこの大会が2022年度最初となる。オリンピック選考も始まっており、卓球およびTリーグにスポットが当たる機会も増えていくのではないだろうか。もしニュース等で選手を見かけた際に、Tリーガーにはそれぞれ背番号があることを認知していただき、そして自分の好きな数字などと結び付けたりと、選手を知るきっかけのひとつになれば幸いである。
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