“リアル”と”バーチャル”で走るレーサー・岡田が語る。「eモータースポーツ」の始め方②

前回のお話はこちらから!

“リアル”と”バーチャル”で走るレーサー・岡田が語る。「eモータースポーツ」の始め方①

どうも、岡田です!

前回に引き続き、「eモータースポーツ」に興味が出てきて、やってみようと思ったときに何から始めればいいのかという話の続きをします。

今回はシートやハンドルなどの「ハード面」のお話です。

目次

「何を目指すか」「どうプレイするか」で変わるハード選び

前回の投稿記事で、一口に「eモータースポーツ」と言っても様々なゲームタイトルがあることが分かっていただけたかと思います。

これもある意味eモータースポーツが他のeスポーツと違う所なのかもしれませんが、プレイ環境選びが「何を目指すか」「どうプレイするか」で変わってきますし、そのレベルによって設備にかかる金額も上下します。

ここでは大まかに「グランツーリスモでとりあえず体験したい」「満遍なく遊べる環境が欲しい」「実車の練習にもなるようなガチ環境を!」の3段階くらいで紹介してみようと思います。

グランツーリスモでとりあえず体験したい

まずはプレイステーションでお手軽にできる「グランツーリスモシリーズ」で、なるべく低予算で遊べるプレイ環境をご紹介します。

遊ぶには最低限
・プレイステーション4か5
・テレビ
・ネット環境(必ず有線。なるべく上質な環境)
があれば普通のゲームとして遊ぶことができますし、標準のPSコントローラー(通称「パッド」)でも世界大会で戦っているプレイヤーは存在します。

ただ、やはり個人的にはせっかくリアルとバーチャルが近い操作で楽しめるeモータースポーツなので、ステアリングを握ってペダルを操作してのプレイを体験して頂きたいところ。

次のステップとしては「折り畳みタイプの筐体」を設置してのプレイ環境です。

eモータースポーツの筐体を家庭に置くときのハードルの一つとして、「場所を取る」というのがあります。
画像のようなタイプのものは、プレイし終わった後は折りたたんで仕舞う事ができるので、まずはこちらでやってみるのもいいでしょう。
(画像の筐体名は「Playseat RC00002 [Playseat Challenge])

ちなみにハンドルコントローラー(以下ハンコン)は様々なものが出ていますが、個人的にグランツーリスモで遊ぶなら「T300RS(スラストマスター製)」という機種がコストパフォーマンスが高くお勧めです。

画像は上位機種の「T-GT」というものを使ってますが、「T300RS」を設置したとして大体20万円程でこの環境が揃うかと思います。

満遍なく遊べる環境が欲しい

eモータースポーツ用のプレイ環境を置く場所は確保できており、より本格的に、グランツーリスモからPCソフトのシミュレーターまで満遍なくプレイできる環境が欲しい!
・・・というわがままな皆様には…

こういった「据え置き」タイプの筐体をお勧めします。

これは実際にプレイをしてみてもらわないと伝わらないのですが、実際には動いていないeモータースポーツにおいても筐体の「剛性」が、プレイの没入感にすごく影響します。

例えばハンコンを固定している台の部分。
グランツーリスモでもそうですが、iRacingやアセットコルサなどのシミュレーター系はステアリングからの振動表現(フォースフィードバック)もかなり力強いものになっています。
固定が甘いと要らない縦揺れや、台から外れてしまうの等のトラブルもあるので、画像のようなボルトでハンコンを固定できるものが望ましいです。

そしてシートレールが設置された実車さながらのバケットシートも、正しい姿勢でのプレイングには欠かせないアイテムですね。
【画像上:DRAPOJI Ver.2(一部特注) 画像下:STRASSE RCZ01】

また、PCタイトルゲームをプレイする場合は「ゲーミングPC」というゲームに特化したパソコン選びも重要です。
(ちょっと説明長くなりますよ)

「ゲーミングPC」は普通のPCと何が違うのかというと、一番特徴的なのは「グラフィックボード」と呼ばれる映像処理の部品を搭載しているところです。
この「グラボ」の性能がそのままゲーミングPCの性能と言って過言ではなく、性能が足りてないと動作が重かったり、処理落ちで起動しない…という問題が起こります。

よくわからないけど「グラボ」が最強のやつ買っちゃえば安心!
…なんですが、ハイエンドモデルの「GeForce RTX™ 3090 Ti」というグラボが入ったゲーミングPCは、それだけで70万円を超えてしまうので、使用用途と予算に合わせたPC選びが大事になります。

僕が家で使っているものは結構前に買ったもので「GeForce RTX™2060」という、数字を見ただけでハイエンドモデルより1030弱そうなグラボが入ったゲーミングPCですが、iRacing・アセットコルサ・アセットコルサコンペティツィオーネを1画面で普通に遊ぶ分にはプレイ可能です。
これで約15万円のゲーミングPCでした。

ということで、「満遍なく遊べる環境」は大体
・モニター約10万円※遅延のないものを選びましょう
・筐体約5~8万円

・ハンコン「T300RS」約5万円
・PS5 約5万円※定価
・ゲーミングPC 15~20万円
・他ソフトや周辺機器など…

で大体40~50万円といったところになるかと思います。

ゲームをプレイする…という感覚ですと、すでに物凄くお金が掛かる印象だと思いますが、この辺りからは「実車でレースしたりすると思ったら安い」という考え方も出来ますし、eモータースポーツを本格的に取り組むなら欲しい環境ではありますね。

実車の練習にもなるようなガチ環境を!

最後の紹介するのはハイエンドでディープにeモータースポーツに漬かりたいという層向けになりますが、最初に言うとこれはもう底なしにお金をかけて行くことができます。

「ガチ環境」というと、こういった見た目のものになります。
パッと見は「満遍なく仕様」で紹介したDRAPOJIと似ており、筐体自体はDRAPOJIは剛性も高いのでガチ環境でも使用できます。

目につくのは凄く横長なモニター
「ワイドモニター」と呼ばれるもので、iRacingやアセットコルサでリアルにプレイしようとすると車内からの視点になるかと思いますが、一般的な16:9のモニターでは視界が狭すぎてドアミラーや横を見ることができません。

なので、画像のワイドモニターや、16:9のモニターを3つ使用して実車により近い視界でプレイできるようにします。
モニターと顔の距離(FOVと言います)もこだわりたくなるはずなので、筐体から柱を生やして調整可能にしたいところ。

広い視界を綺麗に、滑らかに出力しようとすると、やはり1画面でプレイするときよりもゲーミングPCのグラボの高スペックが要求されますので、PCに掛けるコストも上がります

そしてステアリングやペダル部分も高スペックなものに変わります。
前回のゲームタイトルの紹介で、PCタイトルのものは「周辺機器の拡張性が高い」と紹介しましたが、まさにステアリングとペダルはリアルの追及には限りが無く、様々なものが発売されています。

今までお勧めしていた「T300RS」と違うのは、「T300RS」は中身が「ベルトドライブ」という構造で作られてるのに対し、ガチ環境で使用されるようなハンコンは「ダイレクトドライブ」という構造で作られていることです。

どちらも中にモーターが入っていて、ステアの重さや路面のフォードバックを再現していますが、ベルトを介さないダイレクトドライブの方がより「直接シム内の車を操ってる感覚」があり、また熱害のトラブルも少ないというメリットもあります。

ただ、高いです。
T300RSやT-GTはモーター部分・ステアリング・ペダルがセットで5~10万円ですが、ダイレクトドライブのハンコンはそれぞれ別売りでモーターだけで10~40万円するものまであります。
ハイエンドモーターだけで「満遍なく仕様」が揃っちゃいますね…。

そしてなんと言っても、僕個人的に最も大事だと思うのがペダル、特にブレーキペダルです。

これまた「T300RS」などは「踏み込んだ量」を感知する接点式で、実車に比べるとペコペコしたブレーキの印象ですが、より高価なものは「踏みの圧力」を感知する感圧式(ロードセル)で作られています。

iRacingは特に3割~7割のブレーキの使い方が大事になるような挙動をするので、操作性が良くやブレーキタッチが実車に近いペダルは絶対に欲しいところ。

ただ、高いです。
画像のMOZAデバイスで約7万円、調整幅やロードセルのトルクがより高いHeusinkveldのハイエンドペダルで約20万円します。

とはいえ、一度触るとその価値が分かるというか、当然ながらハイエンドなものは実車に近く練習に間違いなくなりますし、プレイの没入感も全く違います。

ステアリングのトルク感(重さの具合)やペダルの重さ・効き具合など、幅広いセッティングが可能なのもこのレベルのパーツの特徴ですが、それ故なかなかポン付けで決まらず、ちゃんとした知識が無いと活かし切れません。

この辺り日本語マニュアルや設置サポートの対応があるZENKAI RACINGさんなど、アフターサポートが充実している所からの購入がお勧めです。

今ここまで紹介した環境で、だいたい100万円規模のものになります。
「音」に拘ってみたり、ドリフトに必要なサイドブレーキやシフトのパーツを追加したりすると150万円にとどくかも。

さらに筐体にダンパーなどを装着して筐体を揺れさせ、加減速・横Gを再現する「モーションSIM」になると、400万円級になります。
これはもう施設団体向けで、家にモーションSIMを置くという変態さんはなかなかいらっしゃらないと思いますが…(笑)

…ということで、一口に「eモータースポーツ」と言っても、単にゲームとして遊べるものから、実車が買えちゃうくらいコストを掛けたものまで様々です。

さすがにいきなり100万円!というとなかなか腰が重いですが、そういったものがある…というのを頭の片隅に置きつつ、まずは折りたたみ筐体から是非触れてほしいなと個人的には思っています。

最近はレーシングシミュレーターの試乗会や体験会なども、サーキット会場だけでなく車のディーラーやイベント時のコンテンツで開催されてることもありますので、見つけた際にはぜひ体験してみては如何でしょうか?

岡田

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この記事を書いた人

岡田 衛のアバター 岡田 衛 eモータースポーツ&リアル モータースポーツドライバー

1995年5月24日生まれ。
幼少期よりレースゲームに興味を持ち、現在「グランツーリスモ」シリーズを中心に活動する
eモータースポーツプレイヤー。
2019~2020「GTSport GR Supra GT CUP」日本代表プレイヤー
2020「インタープロトeシリーズ」年間チャンピオン。
2021年より実車のモータースポーツにも挑戦。
2021年ロードスターパーティレース西日本NDシリーズ年間3位
2022年はスーパー耐久ST-2クラス「新菱オート☆DIXCEL☆EVO10」にて年間シリーズ参戦。
株式会社ウィンズアゲイン所属

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