文部科学省の定義によると、
「スポーツは、体を動かすという人間の本源的な欲求にこたえるとともに、爽快感、達成感、他者との連帯感等の精神的充足や楽しさ、喜びをもたらし、さらには、体力の向上や、精神的なストレスの発散、生活習慣病の予防など、心身の両面にわたる健康の保持増進に資するものである」
となっています。しかし、スポーツではありませんが、農業(稲作)に触れてみてわかったことは、定義の中のすべてがそれで達成されていたように感じます。
機械化が進む農業であっても、たい肥をまいたり、苗を植えなおしたり、草取りで体を動かします。水路の掃除で出会った方々はとてもご高齢には見えない身のこなしをされていました。作業が終わった後の爽快感、協力して作業する連帯感、収穫後の達成感、自然に触れることによるストレス解消、すべてが生活習慣病予防につながりそうです。もちろん、やりたい、やりたくないはありますが、私は生きることに直結する食べ物を自分の手で作りたいと思ったので携わっています。
「勝つこと」「人気を得ること」「自己実現」
スポーツ特有の特徴は、勝敗があること、人気を得ることができ、自分特有の能力を生かせること。もちろん農業においても、収量が多かったり、栄養価が高かったり、自分特有の工夫が生かせたりもしますが、基本的にそこに競争はありません。勝つこと、人気が出ることで報酬をもらい、自己肯定感を得る。それもスポーツ産業にとっては大切なことだと思います。しかし、プレーヤーがこれらを実現するための要素としては何が大切なのでしょうか。
勝つことで人気を得ることは可能ですが、それだけでは人気を持続させることはできません。負けた瞬間に人気は下がります。人気を持続させるためには勝ち続けなければなりません。「勝つこと」を自己実現の手段にするとやがて疲れ果ててしまいます。
応援されるヒトになる
勝つことへの執念も場合によっては、練習へのモチベーションを上げる、土壇場での目的の確認にもなると思いますが、世界シニアバドミントン大会の映像を見ていて、対戦相手やコーチに対する尊敬、、ペアを思いやる気持ち、そしてラリー間に出る笑顔がとても印象的な選手がいました。苦しい場面でも笑顔を絶やさず、土壇場で出た素晴らしい連続ミラクルプレー。勝負が決まった瞬間も小さくガッツポーズ。誰よりも「さわやかさ」を感じた選手でした。そしてそのまま優勝。もちろん過去の実績も実力もある選手でしたが、何よりも応援したくなる、お手本としたい選手でした。
スポーツの目的とは?
改めて考えてみると、「勝つこと」にこだわる姿勢は大切ですが、「さわやかさ」にプレーすることができなければ、すべて実現しにくくなると思いました。瞬間瞬間に全力で取り組み、相手への尊厳や思いやりを忘れず、感謝の気持ちを表現し、笑顔を絶やさない。これらを実践していると良い人に巡り合うことが多くなると言われているボクシングのコーチもおられます。そうなると人生も大きくいい方向へ転換していく可能性もでてきます。私自身も「さわやかさ」にプレーできるよう、日々精進したいと考えています。
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