【スポーツ×ジェンダー】スポーツ界で広がるジェンダー平等 スポーツに励む女性ビジュアルのポイントを iStock 専門家が解説

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サッカーのFIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージーランド大会が開幕しました。「なでしこジャパン」をはじめ、各国の女性アスリートの活躍が期待されています。

一方で、女性アスリートの撮影という点では、盗撮や性的な要素を強調した形での撮影、そういった画像のネット上での拡散といった女性アスリートを侮辱するような行為が度々起きてきました。スポーツ界やアスリートからも撲滅に向けた声が上げられ、7月13日には、そのような行為を処罰する法律「撮影罪」(性的姿態等撮影罪)も施行されたところです。

偏った見方ではなく、女性アスリートの真の強さを伝えるため、ビジュアル描写においてはどういった配慮が必要なのでしょうか。iStockのクリエイティブインサイトマネージャー遠藤由理が、スポーツに励む女性のビジュアル表現について解説します。

目次

istockとは

市場の分析データに基づいた、質の高い1億7000万点以上のコンテンツを中小企業や小規模事業者に提供する世界最大級のストックフォトサイト「iStock」(以下iStock)は、時代に合わせた企業コンテンツを提案し、クリエイティブの分野においても業界を牽引し続けています。iStockを運営するゲッティイメージズのビジュアル調査「VisualGPS」(*)に裏付けられた市場のニーズやトレンドをもとに、世界中の37万9千人以上のコントリビューターと呼ばれる契約クリエーターに対して撮影指導を行うことで、時代に合わせたコンテンツを提案しています。

*ゲッティイメージズは、2020年2月より、世界的な市場調査会社であるMarketCast社と提携し、26カ国13言語で1万人以上の消費者と専門家を対象に調査を行い、「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにした「VisualGPS」と呼ばれるガイドラインを作成しています。VisualGPSの詳細情報はこちらをご覧ください。

スポーツ界における長年の男女差、広がる「平等」意識

長年、スポーツ界は男性主体のものであるとされ、男性スポーツの人気が高かったり、アスリートだけでなくコーチも男性ばかりだったりと偏りが見られていました。スポーツにおける男女格差も若いうちから始まっていて、例えば、学校教育では、「ダンスは女子」「サッカーは男子」などという認識から、男女で種目を変えて授業を行う学校も少なくありません。さらにアスリートへの報酬についても格差があり、例えばW杯でいうと、前回大会での賞金総額について、男女で400億円以上の差があることなどが明らかになり、今回の女子W杯では、全選手に賞金を配分するなどの措置を講じています。「男性の方が女性より体力がある」といったステレオタイプを背景に、スポーツ界では長年、男性優位で考えられ、機会や報酬にも関わるようなジェンダーによる格差が根強かったと言えるでしょう。

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7割以上が「女性アスリートのリアルな姿」をビジュアルに求めている

VisualGPSの調査結果によると、グローバルでは消費者の7割以上が、「女性アスリートを、美しさや魅力ではなく、技術や運動能力に焦点を当てたリアルな姿で表現してほしい」と求めていることがわかっています。日本の消費者についても、7割以上が、「アスリートは性別に関係なく、パフォーマンスとスポーツ、スポーツ組織への総合的な貢献度に基づいて報酬を受けるべきである」としており、消費者の女性スポーツ、アスリートに対する平等への意識は高いと言えます。

近年は、多くの女性がスポーツを楽しみ、女性アスリートの人気も高まっています。スポーツ界においても平等が重視されるようになっていて、例えば、デロイトの調査によると、女性スポーツのスポンサーシップ投資は、全世界で10億ドル(1100億円)を超えると予想されています。スポーツに励む女性の姿が増加していく中で、どのようなビジュアル表現が必要なのでしょうか。

ランニングやヨガ。iStockで人気のスポーツをする女性のビジュアルとは

ここで、日本で過去10年間、iStockで人気のスポーツに励む女性のビジュアルを見てみましょう。2013年から2022年まで、スリムな女性がランニングやヨガ、筋力トレーニングなどの運動をしているビジュアルが一貫して人気でした。10年前は、女性が減量する姿がメインに据えられ、それこそが良いもののように捉えられてきましたが、徐々に、筋力トレーニングやリラクゼーション、体と心のバランスの取れた「ホリスティック・ウェルネス」を取り入れた、よりバランスの取れたアプローチへとシフトしていきます。2019年にはeスポーツが台頭し、これまでにない新しいスポーツの認知が広がりました。60歳代以上の層高齢者が運動する姿も当たり前のように見られています。

このように、スポーツをする女性のビジュアルは、女性自身のスポーツへの関心の広がりや憧れとともに、フィットネスやウェルビーイング、個々の成果を求める姿などを反映しています。

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「ボディ・ポジティブ」なビジュアルで女性のエンパワーメントを高める

過去10年間、iStockで人気のビジュアルを見てきましたが、社会や他人が決めた「理想的な外見・体型」にとらわれない「ボディ・ポジティブ」といった多様な体型を表現したビジュアル人気がまだ限定的であることが言えます。インクルーシブなビジュアルを活用することで、あらゆる体型の女性のエンパワーメントにつながるのではないでしょうか。

さらに、ビジュアルには20代や30代など若い世代が主に登場し、50歳代以上の女性や子どもの描写も限られています。さまざまな年齢層の女性をビジュアルに登場させることで、年齢にまつわる固定観念を打ち破り、世代を超えたスポーツへの参加を促し、女性の多様な経験を伝えることができます。

また人気のビジュアルのほとんどが、ランニング、ヨガ、筋力トレーニングなどの限られた運動に偏り、プロのアスリートや競技スポーツの表現が不足しています。プロのアスリートに着目することで、向上心のあるロールモデルを提供し、スポーツにおける女性の活躍を幅広く紹介することができるのではないでしょうか。

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女性アスリートのリアルな姿を表現するビジュアルのポイント

多くの消費者がスポーツに励む女性の姿がビジュアルではリアルに表現されることを望んでいます。その一方で、多様な女性の姿を表現していますか。

特定のスポーツや活動に偏ることなく、さまざまなスポーツや活動を行う女性を反映させましょう。

様々なレベルのアスリートが反映されていますか

プロのアスリートやだけでなく、プロ以外でもスポーツを実践している個人にスポットを当て、スポーツに携わる女性の献身や功績、多様な経験を紹介しましょう。 

女性の真の姿や感情を捉えていますか。

スポーツの厳しさ、勝利する喜びなど様々な感情を紹介することで消費者にが親近感を与えましょう持ちます。

ホリスティック・ウェルネスが表現されていますか。

減量や成功に焦点を当てるだけでなく、健康的なメンタルヘルスケアや、セルフケアを念頭に置いた通して、、心身包括的のなウェルビーングのなど、より幅広い側面を取り入れましょう。人気のビジュアルにはまだ偏りがあることがわかりました。スポーツをする女性のビジュアル表現に関するポイントをまとめました。

ボディ・ポジティブを取り入れていますか。

スリムな女性ばかりではなく、さまざまな体型の女性を取り入れることで、インクルーシブな女性の美しさを表現しましょう。

⑤多様な年齢層を反映していますか。

生涯スポーツへの参加を奨励し、年齢にまつわる固定観念を打ち破り、将来の世代にインスピレーションを与えるため、50歳代以上の世代や子どもたちの割合を増やしましょう。

⑥ホリスティック・ウェルネスが表現されていますか。
減量や成功に焦点を当てるだけでなく、メンタルヘルスケアやセルフケアを念頭に置いた、心身のウェルビーングのより幅広い側面を取り入れましょう。

1158737675,Trevor Williams,GettyImages / 1458511039,staticnak1983,iStock / 700578908,JessieCasson,GettyImages

スポーツに励む女性のビジュアル表現については、iStockを運営するゲッティイメージズが作成したガイドライン「Women and Girls in Sports」を参考にしてみてください。https://engage.gettyimages.com/women-in-sport

iStock クリエイティブ専門チーム Creative Insights マネージャー 遠藤由理 プロフィール

10代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはiStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insight(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

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