こんにちは、潤です!
今回は「天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会」にて公式戦初対戦となった「ジュビロ磐田(J1) vs テゲバジャーロ宮崎(J3/宮崎県代表)」の試合へ伺いましたのでその様子についてまとめてみました。
ぜひご覧ください!
天皇杯ならではの初対戦
歴史を紡ぎ、3桁を超える開催数を誇る「天皇杯」が今年も開幕しました!
「天皇杯」といえば数々の「ジャイアントキリング」が巻き起こることも一つの魅力。「ジャイアントキリング」が発生するということは逆にカテゴリーが異なるクラブが対戦するということでもあります。そのため、普段は対戦しないクラブ同士の公式戦が行われるという楽しみがあるのも大きな特徴です。
そんな特徴が随所に表れた「天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会」2回戦。昨年に引き続き、今年も2回戦の試合会場へ伺うことができました!
今年訪れたのは「ジュビロ磐田(J1) vs テゲバジャーロ宮崎(J3/宮崎県代表)」の対戦が行われたヤマハスタジアム(磐田)。1994にJリーグへ参入したジュビロ磐田、そして2021年にJ3リーグへ参入したテゲバジャーロ宮崎。
2021年にJ3参入をし、参入初年度ながら”史上初のシーズン最終戦後日に優勝”の可能性があるほどに躍進したテゲバジャーロ宮崎。テゲバジャーロ宮崎にとっては休節となったシーズンJ3リーグの最終節、他会場の結果により3位での初年度を終えて、躍進のきっかけとなった梅田魁人選手や前田椋介選手がJ2への個人昇格を遂げるなどJ2ライセンスを持たないクラブながら充実した初年度を終えたものの、翌年以降はなかなか苦しいシーズンが続いています。
昨シーズンは7試合連続無得点を記録するなどあわやJFLと入れ替わる可能性もありつつ、JFLの上位クラブのライセンスの兼ね合いの影響もありJ3残留を果たしたものの、今年も現時点ではJ3残留争いに巻き込まれてしまっているテゲバジャーロ宮崎。そんな中で迎えた4度目の天皇杯。そして「三度目の正直」にて初のJ1撃破への挑戦へ臨みます。
※ちなみに九州における「Jリーグ空白県」最後の一つを埋めることになったテゲバジャーロ宮崎ですが、創立 は1回目の東京五輪翌年の1965年と、クラブとしての歴史は長いです。
縁深い両クラブ!?
公式戦の舞台で初めて顔合わせをする両クラブですが、サポーターの皆様にとっては接点を感じている方も多いのではないでしょうか?
2017年3月。当時九州リーグ(JFLの一つ下のカテゴリーでJ1から数えると「5部相当」)所属だったテゲバジャーロ宮崎から出たリリース。
日本代表選出歴もあった森島康仁選手が1部→5部へ移籍したことで話題にもなり、多くのジュビロ磐田サポーターがテゲバジャーロ宮崎のことを知るきっかけにもなりました。
※この年森島選手は得点王かつMVPにも輝く大活躍でテゲバジャーロ宮崎はJFL昇格を達成しました!
その後も山崎亮平選手(※2023シーズン)、そして今シーズンからは大武峻選手がテゲバジャーロ宮崎に所属するなど馴染み深い選手も多くいます。
いよいよ試合開始!
6月1日(土)以来の試合と10日以上の試合間隔が空いたジュビロ磐田、そして6月9日(日)に宮崎でリーグ戦を戦っていたテゲバジャーロ宮崎。試合間隔の差もあった中で行われた試合でしたが、両クラブともに前回のリーグ戦から大きくメンバーを変更して臨みました。
磐田はGK含め、スタメン全員を入れ替えてリーグ戦での出番が限られていたメンバーを中心に天皇杯初戦を迎えます。一方、宮崎県代表として1回戦を勝ち上がってきた宮崎は連戦の影響もあって、直近のリーグ戦から8名を入れ替えました。
磐田はFW登録選手が0、MF登録の選手7名、そしてCBを本職とする選手もDF #3 森岡陸選手1人のみと苦しい台所事情を感じさせるメンバー選出となります。
ですが怪我により出遅れていた新加入ストライカーFW #17 ウェベルトン選手が初のベンチ入りを果たし、今季加入のブラジリアンカルテットがメンバーには揃い踏みとなり、3年目を迎えたDF #36 リカルド・グラッサ選手を含めた「ブラジリアンクインテット」が初めて集結するなどベンチメンバーを含めると期待も高まる組み合わせとなりました。
一方の宮崎も連戦の影響からか、元チームメイトの藤岡浩介選手(※FC岐阜)らと並んでJ3リーグ3位タイとなる8得点をあげているエースストライカーFW #11 橋本啓吾選手がメンバー外になるなど万全ではないメンバー調整を強いられます。
検査療養もあり、キャプテンのDF #28 眞鍋旭輝選手が開幕直後から不在となる中、この試合でもゲームキャプテンを務めたDF #4 大武峻選手が古巣凱旋試合でのクラブ史上初の「ジャイアントキリング」達成を目指します。
そして迎えたキックオフ。クラブ史上3度目のJ1クラブとの公式戦で初の「ジャイアントキリング」を達成するため臆することなく前線からプレスをかけます。ですが、足元の技術に強みを持つ磐田の両ボランチMF #25 中村駿選手やMF #77 藤原健介選手、さらにはこの試合ではCBに入った本職がボランチのMF #28 鹿沼直生選手を中心にパスを回す磐田のビルドアップを捕まえきれません。
そこから徐々に磐田がペースを掴むと、公式戦でのヤマハスタジアム(磐田)デビューとなったDF #2 川﨑一輝選手が昨季所属していたカマタマーレ讃岐でホーム・アウェイ共にスタメンとして勝利に貢献した相性の良い宮崎相手に果敢な攻撃参加でスタジアムに駆けつけたサポーターを沸かせます!
果敢な攻撃参加から川﨑選手が右サイドを活性化させれば、左サイドをMF #31 古川陽介選手が活性化させます。立ち上がりから立て続けにシュートチャンスを迎え、ゴールの予感を漂わせますが宮崎の守護神GK #55 青木心選手が立ちはだかりスコアは動きません。
その後もなかなかセカンドボールを拾えずチャンスを作れない宮崎と、ボールは繋げつつもシュートまではなかなか結びつかない磐田という構図で前半が進みます。加入後公式戦初得点に燃え、「ブラジリアンクインテット」唯一のスタメンとなったMF #19 ブルーノ ジョゼ選手がゴールをアクロバティックなバイシクルシュートで脅かす場面もありつつも惜しくもクロスバー直撃。
一方の宮崎もDF #15 辻岡佑真選手が直接フリーキックから枠内シュートを放つも磐田GK #20 坪井湧也選手がセーブ。その後も左サイドの突破からFW #38 楠大樹選手がエリア内でボレーを放つも枠外。そのままスコアは動かず0-0で前半を終えます。
こう着状態を打破したのは…!
迎えた後半。先に動いたのは宮崎でした。
コロナ禍以前のJFL時代から宮崎一筋でクラブ最古参(※奥田裕貴選手と並んで最古参)の6年目を迎え、6月9日(日)のリーグ戦にもフル出場していたDF #2 青山生選手が後半開始と同時にピッチへ送り出されます。
一方、ペースを掴みつつも先制点までは結びつけられなかった磐田は前半と同じメンバーで後半へ臨みます。
そして後半開始早々相手ゴールへ迫ったのは磐田でした。ここまでリーグ戦では出番がなかった川﨑選手がディフェンスラインから積極的な攻撃参加でエリア内まで抜け出してシュート!このシュートは惜しくも枠外へ。先制点には繋がりませんが、引き続き磐田優勢のペースで後半も進む予感がスタジアムを包みます。
そして迎えた61分。ついに均衡が崩れます!
敵陣深くで磐田がフリーキックを得ると中村選手のクロスに頭で合わせたのはブルーノ ジョゼ選手!ここまで再三ピンチを防いでいた宮崎GKの青木選手が懸命に指先まで伸ばすも惜しくも触れられずゴールネットに吸い込まれます。
苦しみながらも掴んだ来日初ゴールにベンチ入りしていた「ブラジリアンカルテット」全員も自分のゴールかのように喜びを爆発させ、勝利へ大きく近づく先制点が生まれました!
ヤマハでJ1相手に先制を許し、「ジャイアントキリング」へ後がなくなった宮崎は失点後すぐに青山選手同様6月9日(日)のリーグ戦にもフル出場をしていたMF #20 阿野真拓選手、そしてそこから9分後にはシーズン途中に水戸ホーリーホックから育成型期限付き移籍で加入し売り出し中のドリブラーMF #44 井上怜選手がピッチへ送り出されます。
先制に成功した磐田は72分、190cmの大型ストライカーFW #99 マテウス ペイショット選手が出場することでFW選手がピッチに入ることになりました。
両クラブが交代枠を使う中、功を奏したのは宮崎でした!
途中出場の井上選手が左サイドをドリブルでかき乱してゴールへ向かう柔らかいクロスを上げると、そのボールには誰も触れられず流れてポストに当たって跳ね返ってしまいますが、そのボールにいち早く反応したのはこちらも途中出場の阿野選手でした!J3宮崎がJ1磐田相手に追いつきます!
試合開始前には「90分で勝とう!」と平日にも関わらずゴール裏に集まったサポーターが鼓舞していた中、台所事情も決して順調ではない中で同点に追いつかれこのままでは延長に突入する磐田は再度リードをギアを上げます。
シーズン序盤の悔しい時期を乗り越え浦和レッズ戦でのファーストタッチでの同点弾を皮切りに直近のリーグ戦でも信頼を勝ち取り始めたMF #40 金子翔太選手が失点直後にペナルティエリア内でキープするも古巣戦で躍動する大武選手が自由を与えず、シュートは打てません。ですが金子選手もボールを失わずに狭いスペースの中でクロスを上げると合わせたのはペイショット選手!打点が高く、頭ひとつ抜け出したヘディングを叩きつけますが惜しくもポスト直撃。勝ち越し点は生まれません。
ですが、試合終盤の疲労や追いつかれた焦りからか磐田のパスワークが乱れ始めチャンスシーンを作れなくなり不穏な空気が漂います。片やJ1相手に追いついた宮崎はより勢いが生まれ、試合終盤に前を向けるプレーが増えます。
そんな攻めの姿勢が実ったのは後半アディショナルタイム。井上選手がエリア内へパスを共有するとそこへ抜け出したのはMF #8 力安祥伍選手。ペナルティエリア内で倒され宮崎が大金星に近づく大きなPKを獲得します。
磐田にとっては絶体絶命の大ピンチ。サポーターもPKセーブを願う中、ベンチからはDF #36 リカルド グラッサ選手が大声で鼓舞するも一枚上手だったのは井上選手。プレッシャーのかかる場面でもしっかり決め切り自身今月2本目のPKを沈め宮崎が土壇場で逆転!2-1とリードを奪います。
後がなくなった磐田は失点直後FW #17 ウェベルトン選手を投入し、磐田加入後公式戦初出場のストライカーに同点弾の期待もかかりましたが真価を発揮するには時間が足りず無情にも試合終了のホイッスル。
磐田にとってはルヴァンカップでのJ2クラブ相手の敗戦に続き、今度はJ3クラブ相手への敗戦。異例とも言える1シーズンでJ1・J2・J3の全カテゴリークラブに公式戦で敗れるという事態に陥る悔しい結果となりました。
一方の宮崎は公式戦で初めてのJ1クラブ撃破で「ジャイアントキリング」達成とクラブ史に残るような大きな勝利を劇的な逆転で掴みとりました!
天皇杯ならではの魅力も詰まった一戦
「プロ野球より高校野球の方が好き」という人の話を時折聞くことがあります。そういった方に理由を聞くと「1試合にかける必死さが伝わってくるから」と言う方も多い印象です。(あくまで統計等はなく個人的な印象ですが)
自分はその感覚に近いのが天皇杯だと思います。
一発勝負のトーナメント戦。「プロ選手」として生きていく上で欠かせないのがクラブで結果を残すことです。ですが、狭き門である「プロ選手」の座を掴みとった選手でも「出場機会」を得られない選手も多いです。そんな選手が1シーズンでも長く「プロ選手」であり続けるための大きな機会となるのがカップ戦。
下部カテゴリークラブの選手は上位カテゴリー相手に通用するところを見せつけることで自分の実力を証明し、上位カテゴリークラブの選手はカップ戦での勝ち上がりはもちろん、リーグ戦での出場機会へ繋がるようなアピールをしなくてはいけません。
だからこそ敗戦すればそれだけ自分をアピールできる場がなくなり、自分自身が「プロ選手」であり続けられる可能性が削られてしまいます。リーグ戦での出場時間が0分だった選手にとって「試合出場時間を得る」。それがどれだけ過酷なことかはきっと想像を絶する厳しさがあるはずです。
高校球児が最後の高校生活をかけた熱さを甲子園で見せるなら、プロ選手が「プロ選手であるため」の生活をかけた熱さを見せるのがこうした「ジャイアントキリングも起こり得る」カップ戦です。だからこそ試合後の選手たちの姿から表れるリーグ戦とはまた違った敗戦の悔しさや喪失感。それはノンフィクションだからこそのスポーツの過酷さや儚さに感じられた日になりました。
磐田にとっても大きな分岐点になる可能性を秘めた試合、そんな試合を終えた選手たちがここからどんな「ジャイアントキリング」を生んでいくのか、その歩みをこれからも追っていきたい。そう思える1日でした。
そして勝利した宮崎は、リーグ戦では入れ替え戦圏内である19位と同勝ち点・同得失点差の18位とJ3残留のためこれからも痺れるシーズンが続くことが見込まれます。
ですが、6月の試合ではYS横浜相手に今季初の完封勝利を記録し続く北九州戦はドロー、そして今回の磐田戦では「ジャイアントキリング」を達成など宮崎よりも上位クラブ・上位カテゴリークラブ相手との連戦を2勝1分と無敗をキープし、大熊裕司新監督の元開幕期こそ出遅れたものの浮上の予感が漂い始めています。
この「ジャイアントキリング」の勢いそのままにここから躍進する宮崎のこれからにも注目です!
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