あきらめざるを得なくなりました。
ハワイ大学のキッカー松澤寛政選手について、今シーズンの偉業をきちんとした物語としてまとめようとする試みは。
理由は単純で、次から次に受賞や選出などのニュースが入ってきて、展開が速すぎて、これから先も何があるかわからないからです。
何かを書こうとすると、その前提がすぐに古くなります。
一区切りを設定した瞬間に、次の出来事が上書きされてしまいます。
たとえば、12月15日の、NFLのインターナショナル・プレーヤー・パスウェイ(IPP)プログラムのメンバーに選ばれました。
一つの到達点として十分に扱える実績でした。
ところが間を置かずに、同日AP通信によるオールアメリカ選出が発表されました。
ではここまでを一つの章にしようと考えます。
しかしその直後、翌16日米国フットボールコーチ協会によるオールアメリカ選出が発表されました。
ここまでの主な受賞歴はこんなところです。
12月 3日 マウンテン・ウェスト・カンファレンスのスペシャル・チームズ最優秀選手賞を受賞
12月12日 ウォルター・キャンプ・フットボール財団によるオールアメリカ選出
12月15日 NFLのIPPプログラムメンバーに選出
12月15日 AP通信によるオールアメリカ選出
12月16日 米国フットボールコーチ協会によるオールアメリカ選出
12月17日 Sporting Newsのオールアメリカ選出
12月18日 FWAAのオールアメリカ選出
始点をどこに置いても、終点が定まりません。
途中で区切ろうとすると、そこはすでに過去形になっています。
結果として、松澤寛政選手の受賞ラッシュは、整理という作業そのものを置き去りにして進んできました。
成長のスピードが速い、という言い方では足りません。
評価の種類が多い、という説明でも十分ではありません。
むしろ特徴的なのは、書き手が追いつく前に次の局面が始まってしまう、という現象です。
この状況を、無理に一本のストーリーに押し込むこともできるでしょう。
いわゆるシンデレラストーリーとして、美しく整えることも可能です。
ただ、現時点ではそれよりも、この整理できない受賞ラッシュ状態そのものが、松澤寛政選手の現在地を正確に示しているように思えます。
物語にならない。
しかしそれは、評価できないという意味ではありません。
むしろ逆です。
記録が更新され続ける限り、整理は先送りになります。
章が閉じられないまま、次のページが書き足されていきます。
今の松澤寛政選手は、そういう段階にいます。
ですからここでは、結論を急ぎません。
整理もしません。
ただ、追いつかないという事実だけを、そのまま残しておきます。



