2022年シーズンは、マリナーズが21年ぶりのポストシーズン進出、ヤンキース、アーロン・ジャッジがア・リーグ新記録の62ホームランに、今シーズン限りで現役を引退したアルバート・プホルスのカーディナルス復帰&予期せぬ通算700ホームランなど素晴らしくそして、楽しいシーズンであった。しかし、来シーズン、2023年の開幕前からいつもとは違った興奮をもたらしてくれるだろう。なぜなら、約6年ぶりにワールドベースボールクラシック(WBC)が開催されるからだろう。
WBCの各ラウンドはそれぞれ5か国に分けられA組、台中ラウンドに自国のチャイニーズ・タイペイ、イタリア、オランダ、パナマ、キューバ、B組東京ラウンドに日本、中国、韓国、チェコ共和国、オーストラリア、そして、アメリカ大陸に目を向ければ、C組アリゾナラウンドにマイク・トラウトはじめ過去最強となる超スター軍団を集めたアメリカ、イギリス、カナダ、コロンビア、メキシコに、D組マイアミラウンドは、ドミニカ共和国、ベネズエラ、ニカラグア、プエルトリコ、イスラエルでD組はとりわけ”死の組”といえるものだろう。そこから、各ラウンド1、2位が東京、マイアミで開かれる準々決勝に進み、さらに勝ち進んだ場合マイアミラウンドの会場ローンデポ・パークで決勝ラウンド(準決勝2試合+決勝戦)が開かれることとなっている。
そのため、日本のファンの人々は台中ラウンド1、2位の国と東京ラウンドに出場する5か国の選手をテレビや生で見ることとなるだろう。今回、今年最後となる(かもしれない)ウルスポの記事で、あと2、3か月ほどに迫った待ち遠しいWBCの試合の感情を抑えきれず日本以外の選手で個人的に見てみたい注目の選手をまとめた。いつもとは違いやや独断的になってしまうが、お付き合い願いたい。
韓国代表
トミー・エドマン
昨年、ナショナルリーグ二塁手部門のゴールドグラブ賞を受賞し、今シーズンも新設されたユーティリティー部門でファイナリストに選ばれた守備の名手。今シーズンは、主にショートを守っていたポール・デヨングが不振でマイナー降格となった後、ショートを守りOAA11と素晴らしい守備を披露した。それに加えセカンド、ショート、外野2つのポジションを含めたOAAでは19を集め、リーグ全体では100パーセンタイルとトップクラスの数字をマークしている。またバッティング面では、チームメートでアメリカ代表として出場することが決まっているポール・ゴールドシュミット、ノーラン・アレナドほどのパワーは無いが、三振率17.6%と平均を下回るコンタクトヒッターの為、相手投手にとっては打ち取りにくい選手だろう。また走塁面でも昨年のスプリントスピード、28.9ftはリーグトップ8%に位置し、今シーズンもまったく変わらないスピード(28.8ft)をフィールド上で披露した。newsdirectory3.comの記事によると、エドマンの母方が韓国人で、フルネームはトーマス・ヒョンス・エドマンとなっている。またエドマンは2年ほど前の韓国メディアの取材に対し、「キム・グアンヒョン(この記事の当時はカーディナルス所属で日本キラーとして覚えているファンもいるのではないだろうか)と同じように、僕もまたコリアンだ。多くの母親方の親戚がロサンゼルスに住んでいて、みんな韓国語で話している」と語っていたそう。
キム・ハソン
今シーズン開幕はケガで出遅れ、復帰の最中に禁止薬物規定違反となってしまったパドレス、フェルナンド・他ティスJRの穴を安定した働きで埋めた、現在アジアナンバーワン内野手。昨シーズン、パドレス移籍後はWRC+70と打撃で平均以下と精彩を欠いたが今シーズンは同指標で106と平均並みの数字をマークし、昨年と同様、選球眼もチェース率が24%とストライクゾーンのコントロールには長けていた。とはいえ最も傑出したものは、ディフェンスでショートでのOAA8 DRS10をはじめ、送球の速さにおいてもリーグ8位の87.1マイルを記録した。(ショートの平均球速は85.9マイル) それゆえメジャーでもトップクラスのディフェンスを誇る2選手が同じチームに入るだけでなく、二遊間を守るというのはとてもワクワクさせるものだ。
オランダ代表
ザンダー・ボガーツ
おそらく、MLBのファンの中でボガーツがオランダ代表入りすることを望んでいる人は、多い事だろう。
今オフ、FAトップ4人のショートストップであったボガーツは、2018年からのフルシーズンで最低20ホームラン以上は成し遂げられなかったが、打率.307、WRC+134の成績を収め、10年以上を過ごしたレッドソックスとの契約をオプトアウト、11年総額2億8000万ドルでパドレスとサインした。さらに、今シーズンはショートの守備も改善し、以前まではマイナスが並んでいたが守備防御点で初めてプラスの数字をマークした。またボガーツは2013年、前回大会の2017年でもオランダ代表で出場しており、東京ドームで運よく生で見れた人もいる事だろう。まだオランダ代表は選出メンバーを発表していないが、メジャーを代表するスターをこの目で見れたら、大変うれしい。
セダン・ラファエラ
レッドソックスプロスペクトランキング3位のトッププロスペクト。今シーズンは、シングルA+とダブルAで打率.299をマークし、自慢のバットにボールを当てるスキルを披露した。また一方、そのスキルは弱点を露見させるものであり、ボールを追っかけすぎる癖、ボテボテの弱しい打球を生み出してしまう面もある。だが、守備、スピードは素晴らしく、外野では打球に対しての反応、打球ルートの読みは抜群で、肩の強さは内野、外野それぞれで平均以上を示している。また、今シーズンではセンターをはじめ二塁、三塁を守ったようにユーティリティー性も兼ね備える。
イタリア代表
ビニー・パスクアンティーノ
ニックネームは、”イタリアン・ナイトメア”(イタリアの悪魔)でその前は”イタリアン・ブレークファースト”。シーズン終盤の9月前半、その当時ケガをしていたパスクアンティーノはyoutubeでライブ中継されている試合にベンチでインタビューを受けていた。そしてWBCにイタリア代表で出場したいか尋ねられた。
「僕は、今答えるつもりはない。ただ僕が言えることはイタリア代表で出場することを狙っている他の選手が居るということだ。だけど、明かすことはしないよ。それに、誰なのかは予想できるものではないだろうだけど、もし彼が代表入りを決定し発表されたら、興奮するものだろう」とその時点では答えていた。その答えを受けて、解説を務めていたヨンダー・アロンソは冗談で、今シーズン20ー20を達成し同じくルーキーのボビー・ウィットJRかと尋ねたが、パスクアンティーノは「ボビー・ウィットにどれだけイタリアの血が入っているか僕にはわからない」と返した。しかし、その答えは11月9日にパスクアンティーノの所属するロイヤルズの公式ツイッターで明らかとなり、パスクアンティーノに加えニッキー・ロペスのイタリア代表入りを発表した。
今シーズン、開幕前の球団プロスペクトランキングでチーム10位にランクインしていたパスクアンティーノは72試合で打率.295 ホームラン10本 WRC+137を記録した。さらに際立っていたのが、三振率と四球率で前者は11.4%、後者は11.7%とどちらも平均を下回るかつ上回る成績をマークした。また、この活躍からパスクアンティーノはMLB公式が選ぶ、オールルーキーチームのファーストチームに選出された。同じく代表入りが発表されたニッキー・ロペスは昨年、打率3割をマークしたが、今シーズン.229と低迷したがディフェンスは素晴らしく、MLB公式選出のOAAをベースにしたゴールドグラブ賞のユーティリティー部門に選ばれた。
アンソニー・リゾ(NYY)&ブランドン・ニモ(NYM)
リゾは、2016年、カブスのヤギの呪いを解いたワールドシリーズ制覇に貢献した際の中心メンバーで、2021年に現在のヤンキースにシーズン途中にトレードされるまで、クリス・ブライアントに並ぶチームの顔であった。2014年から19年シーズンの間、リゾは一シーズン27~32ホームランを放ち、安定した成績を収め、WRC+は126から155と平均を上回る打撃成績を挙げた。その後、パンデミックによる短縮シーズンを含めた2シーズンで、やや成績が落ちたが、2021年オフにFAとなった後2年総額3200万ドル+オプトアウト付きでヤンキースに残留。今シーズンは様々なケガがあったものの、自己最多タイの32ホーマー、WRC+132でオプトアウト権を行使しFA市場に出戻り、また再びヤンキースと2年総額4000万ドルで再契約を結んだ。また、バッティングでの成績が落ちてさえもファーストの守備は安定しており、今まででゴールドグラブ賞を4度受賞している。
WBCには2013年大会に一度出場している。
一方後者のニモは、今シーズン前までで、様々なケガに悩まされおり、100試合に出場したのはわずか2度であった。しかし今シーズンはメッツのリードオフマンを務め150試合に出場、打率.274、OPS.800 OPS+130と好成績をマーク。今オフFAではアーロン・ジャッジに次いで、外野手ナンバー2の評価であり、同地区ニューヨークに同じく本拠を置くヤンキースやマリナーズ、ジャイアンツ、ブルージェイズがニモの獲得に興味を示したが、メッツと8年総額1億6200万ドルで再契約した。メッツと再契約する前、多くの球団が、ニモに興味を示した理由は、センターを守れる事とキャリア通算で四球率13.6%、通算出塁率.385と高い選球眼のスキルであった。
ジョーダン・ロマノ (TOR)
今シーズン、オールスターに初選出された地元カナダ出身のブルージェイズのクローザー。ここ2シーズンでは、125試合に登板し、防御率2.13、セーブ59 三振率30.9%をマークした。前述の通り、ロマノはカナダ出身であり、前回大会でもカナダ代表入りを望んでいたとのことだが、前回同様父親が生まれた地であるイタリアの代表入りをすでに明言している。「2017年の大会では、カナダ代表で投げたかった。だけど僕のためのスポットはなく、その時点でローAのチームに所属していた(それに加えトミージョン手術明けであった)。そして、イタリア側が訪ねてきて、素晴らしい経験ができた。彼らはチャンスを与えてくれたし、彼らに忠誠心を示したかった」とスポーツネットのインタビューにそう答えている。ちなみに、前回大会ではイタリア代表としてロマノは唯一の勝利投手でもあり、その試合ホスト国のメキシコ相手に9回、最初の2人のバッターを三振に取り最後の一人はフライアウトで抑えた。
キューバ代表
ヨーダン・アルバレス
現在、MLB全体で最強のバッターの一人。今シーズン、135試合で打率.306 OPS1.019 ホームラン37 OPS+187をマークしア・リーグMVPファイナリストの一人となった。また、ポストシーズンでもアストロズワールドシリーズ優勝を決定づけた第6戦のバックスクリーンへの3ランホームランなども輝かしい。
またアルバレスのハードヒット率59.8%はアーロン・ジャッジに次ぐリーグ全体2位。とはいえ、この活躍においておそらく大きなカギとなったのは、選球眼の向上かもしれない。前のシーズン2021年では、アルバレスは四球率8.4%と平均であったが、今シーズンは13.9%まで増加させ、三振率も24.2%から18%まで下げた。それに加え、チェース率も24.3%と自身としてはメジャー4年のキャリアで最も低い数字であった。さらに嬉しいことに、アメリカ行政府はアメリカに住むキューバ選手に対し、WBC出場を許可したためアルバレスの他にも、新たにアルバレスのチームメートとなったホセ・アブレイユ、ホワイトソックスのルイス・ロバート、ヨアン・モンカダもキューバ代表で出場する道が開けた。
ミゲル・バーガス (LAD)
ドジャースプロスペクトランキング3位。長らく、チームでリーダー的存在だったジャスティン・ターナーとトレイ・ターナーがそれぞれ、前者がレッドソックス、後者がフィリーズへ移籍したため、二塁、三塁を守れるバーガスにはその穴を埋める事が開幕から期待される。ただ、足が遅く守備範囲などが制限されるため、将来はファーストに動くのではないかと言われている。とはいえ、バッティング面では三振が少なく、同郷のユリ・グリエルとしばし比較され、インサイドアウトのスウィングでは、右中間を突き破れるスキルがある。また2021年シーズンには、平均以上と称されるボールを引っ張ってのパワースイングでドジャースの関係者でさえ驚かさせた。今シーズン、バーガスはメジャーデビューを果たし、47打席で打率.170といきなり壁にぶち当たったが、メジャーを経験しさらにチャンスを貰えれば、大きく飛躍するだろう。
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