ごきげんよう皆様、卓球していますか?
本日のトピックスは先日開催されました男女混合の世界大会について。
大会の正式名称は「 ITTF混合団体ワールドカップ2023 / ITTF Mixed World Cup 2023」。卓球の”ワールドカップ”という呼称の世界大会は2020年を最後に開催されておらず、代わりに”WTT(World Table Tennis)”というブランドが国際卓球連盟によって立ち上げられ、その名のもとに同規模の大会が開催されておりました。先日名古屋にて行われた「WTT女子ファイナルズ」WTTシリーズのなかでも上位規模の大会です。
ファイナルズに出場できるのはシングルスの世界ランク上位16名と女子ダブルスの上位8組のみ。賞金総額は50万ドル(約7,000万円)。シングルス優勝選手とダブルス優勝ペアにそれぞれITTF世界ランキング1,500ポイントが付与される。
https://www.tv-tokyo.co.jp/tabletennis/news/2023/11/031951.html
そんな当大会ですが初の試みとなる「男女混合」での試合進行となります。試合進行も非常に特殊で、まず各チームは男⼥計6名もしくは8名で構成されます。出場順はまず1番が男女で組む混合ダブルス、2番ならびに3番が混合ダブルスに出場しなかったメンバーによるシングルス、4番ならびに5番が男⼥各ダブルスです。なお混合ダブルス以外は男女での対戦とはなりません。さらに通常の団体戦と⼤きく異なる点は勝敗の決め方。各試合は3ゲームを必ず⾏い、獲得したゲーム数が8ゲームに到達した段階で試合終了、8ゲームを先取したチームの勝利となる点です。各試合は3-0もしくは2-1で決着するわけですが、もし1番、2番が3-0で勝てば、3試合目に2セットを取得した時点で試合終了するわけです。
という初の試みで行われました大会、結果は1位に中国。日本は第ステージで衝突し2勝を挙げるも押し切られ5-8で敗戦。2位は韓国、こちらも同じく第ステージで激突するも2勝止まりとなり4-8で敗北。3位決定戦でドイツに勝利し銅メダル獲得という形で幕を降ろしました。パリオリンピックでもメダル獲得最有力候補である張本智和/早田ひな両名をシングルスで使いたい構想からかダブルス起用が出来ないながらも、戸上隼輔/張本美和のペアが奮闘し勝ち点を挙げられていたことは非常に大きな収穫だったかと思います。対中国でも勝利する快挙を見せました。同じく中国戦にて現世界ランキング1位の樊振東(Fan Zhendong)を男子シングルスで破る活躍を見せた張本選手、パリでのメダルが近付いた一戦になったことかと思います。団体の張本は本当に強い。また、開催地が中国・成都という超アウェーな環境で実力を発揮できたことも重要。3位という結果に選手は不本意かもしれませんが、実りの多かったツアーだったのではないでしょうか。
さて、この混合ダブルスという競技はこのように男女での組み合わせが成立する数少ない競技であると言えます。身体能力で劣る事の多い女子の打球を男子がねじ伏せるだけ、のような単純な展開には全くならず、逆に得点源にされることさえあります。これは卓球競技の特徴の一つで、身体能力がそのまま得点に結びつかないことの証明になると言えます。鍛え上げた筋力でどれほど鋭いサービスを出しても角度を合わせれば返球は容易ですし、どれだけ爆裂なパワーで重たいラケットを振り回そうが置いてあるラケットに当たって追いつけないコースにでも返されたらもうそれで1点失うわけです。トップ層はそうでもないでしょうが、一般レベルなら男子が女子に負けるなんてよくある話です。そしてそれは性差に限った話ではなく、年齢差でさえも跳ね返してしまいます。卓球が生涯スポーツと呼ばれる所以です。
他のスポーツにおいて「男女混合」がどれほど実現の難しいことか。五輪競技で見てみると「馬術」の歴史が非常に長く、1952年から男女混合にて実施されているといいます。確かに馬と心を通わせる事において性差は関係なかろうというもの。男性ほど多くはないが女性の騎手というのも実在します。他にも陸上や競泳のリレー種目、柔道の団体でも男女混合で行われる種目があります。男女含めて国全体としてのチーム力が試されることとなるでしょう。これはスポーツの振興という意味でも大いに価値のあるものであると考えます。と言いつつも、男女でのマッチアップが実現できていないという点は、結局のところ性差は埋めがたいものであるという協議の結果が積み重なって今があるように受け取れます。スポーツ愛好家としても、それが観たいか?となると首を傾げてしまいます。サッカー女子日本代表が男子高校生との練習試合で無得点に終わる、といったニュースを見たこともあります。直接の対決だとどうしても女子選手が不利になる一方で、男女どちらかの競技人口が少ないとチームとして弱くなってしまう、という現実もあるでしょう。私の知見は卓球のみですが、事実としてひとつの国の世界ランキングトトップ選手の順位にひらきがある国もあります。以上のように、男女混合競技にはそれが実現できるような競技特性があるか、競技人口はどうか、男女をうまく取り入れられる拡張性があるかなど、様々な問題を超えた後にのみ実現できる種目なのである、と考えさせられました。卓球はうまく適応できた方だと言うべきなのでしょう。
昨今、性自認とスポーツでの男女の区分が取り沙汰されることが多くなっているように思う。生物学的に男女で明確な差がある以上、どうしても境界というものは発生する。公平性という意味においては、差を無いものとしてそれらを一括りにしてしまうことが正解とは言い難いことも確かであるように感じる。先の東京五輪では男女混合の種目が卓球を含め10競技が行われた。必要な区分はした上で、最大限にすべての選手が実力を遺憾なく発揮できるような環境や基準を設ける事が肝要であるのではないでしょうか。
という点においては、混合ワールドカップの参加においても一騒動ありました。当初、日本は当大会が世界ランキングポイントの付与対象外であることなどを理由に不参加としていましたが、不参加を表明すると中国卓球協会から日本国内のTリーグに参加している中国籍の選手に「中国国内の合同訓練への参加を理由に撤退する」よう指示が出たと言います。初の試みが多く注目を集めるであろう大会、それも先5年間開催されるその初回に世界ランキング上位国が不参加、という事象は中国に十分なほど反発する理由を与えてしまったのかと思われます。中国選手たちは自国の省チームなどにも籍を置いていることから、従わなかった場合の処遇は想像に難しくありません。因果関係こそ不明ですが、これだけを見れば「中国の世界大会に協力しなければ日本のTリーグには手を貸さない」と言っているようなものです。結果的に世界ランキングポイントの付与が決定されたため日本も参加を打診しこれが認めらたため上記の結果となりましたが、参加不参加を巡ってスポーツに政治が持ち込まれたと言えます。
ややこしい事象もありながらも、日本は3位という形で男女混合ワールドカップ初大会は幕を下ろしました。目前に迫ってきたパリオリンピック、メダルは射程圏内な順位ではありますが、悲願は中国を超えての金でしょう。メダル獲得実績のある男女混合競技として、卓球種目の集める注目も前大会以上となるでしょう。東京で巻き起こされた水谷/伊藤の旋風を再び、その舞台に上がるのは現状おそらく張本智和/早田ペアと戸上/張本美和ペアになるでしょうが、選考も残すところあとわずか。張本・戸上・早田は下位の選手に150ポイント以上差をつけており、全日本優勝のポイントは120点。当然彼らも上位入賞によるさらなるポイント加算が見込まれるのでほぼ当確でしょう。女子の2位は現在は平野美宇選手ですが非常に拮抗しているためまだまだ分かりません。Tリーグ成績による加算も残してはおりますが、全日本選手権が決着の場となりそうです。そんなパリ選考という「ややこしや事情」を抱えていたTリーグも残すところあと50試合を切りました。いち卓球ファンとしては、そういった裏側を気取られないような運営や采配を振るっていただきたいところです。
今回はここまで、ご覧いただきありがとうございました。Youtubeもどうぞよしなに。
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