日本の野球リーグ「独立リーグ」とは、日本野球機構(NPB)とは別に組織されたプロ野球リーグの総称です。独立リーグは、NPBや海外のプロ野球リーグに挑戦する選手や、引退後に再びプレーしたい選手などが参加しています。
また、地域の野球振興や地域活性化にも貢献しています。
今回は独立リーグの歴史や23年ドラフトでNPB入りを果たした選手を紹介いたします。
独立リーグの歴史
日本で最初の独立リーグは、2005年に発足した四国アイランドリーグplusです。これに続いて、2007年にはベースボール・チャレンジ・リーグ(BCリーグ)、2010年には九州アジアリーグが設立されました。その後、北海道や東北、関東、中国地方などにも独立リーグが誕生し、現在は全国に10の独立リーグが存在しています。
独立リーグは、NPBとは異なる独自のルールや制度を採用しています。例えば、試合時間の制限やタイブレークの導入、ドラフト会議の開催などです。また、独立リーグは、一般社団法人日本独立リーグ野球機構(IPBL)という合同組織を設立し、共同で運営や交流を行っています。
独立リーグの特徴
独立リーグの特徴は、以下のような点にあります。
選手の育成と輩出
独立リーグは、NPBや海外のプロ野球リーグに挑戦する選手の育成と輩出を目的としています。これまでに、多くの選手がNPBやメジャーリーグベースボール(MLB)などに移籍しています。例えば、角中勝也選手(千葉ロッテマリーンズ)や又吉克樹選手(福岡ソフトバンクホークス)などが有名です。
地域の野球振興と地域活性化
独立リーグは、地域の野球振興と地域活性化にも貢献しています。地域の支えがなければ、どのリーグも成立しないといっても過言ではありません。そのため、野球教室や地域イベントなどを通じて、子どもたちに野球の楽しさを伝えたり、地域の経済や観光も対外的にアピールしたりしています。
活動中の独立リーグ
現在、日本には以下の8つの独立リーグが活動しており、IPBLに加盟しているリーグは5つあります。★マークのあるリーグがIPBL加盟リーグです。
- 四国アイランドリーグplus(2005年)★
- ルートインBCリーグ(2007年)★
- さわかみ関西独立リーグ(2014年)
- 北海道ベースボールリーグ(2020年)
- ヤマエグループ九州アジアリーグ(2021年)★
- 北海道フロンティアリーグ(2022年)★
- ベイサイドリーグ(2022年)
- 日本海リーグ(2023年)★
2023年ドラフトで独立リーグから指名された選手たち
23年のドラフトでは、独立リーグ出身者が育成契約を含めて23名も指名されました。ドラフト指名された選手は総勢122名であり、独立リーグからの23名は社会人野球の14名をはるかに上回る数字です。
23年ドラフトで指名された独立リーグ出身の選手をリーグ別に紹介いたします。
四国アイランドリーグplus
- 椎葉剛選手(徳島インディゴソックス)
- 阪神タイガース ドラフト2位
- 宮澤太成選手(徳島インディゴソックス)
- 埼玉西武ライオンズ ドラフト5位
- 井上絢登選手 (徳島インディゴソックス)
- 横浜DeNAベイスターズ ドラフト6位
- シンクレアジョセフ孝ノ助選手(徳島インディゴソックス)
- 埼玉西武ライオンズ 育成1位
- 谷口朝陽選手 (徳島インディゴソックス)
- 埼玉西武ライオンズ 育成2位
- 菊田翔友選手(愛媛マンダリンパイレーツ)
- 中日ドラゴンズ 育成2位
- 宇都宮葵星選手 (愛媛マンダリンパイレーツ)
- 読売ジャイアンツ 育成3位
- 河野聡太選手(愛媛マンダリンパイレーツ)
- オリックス・バファローズ 育成5位
- 藤田淳平選手(徳島インディゴソックス)
- 福岡ソフトバンクホークス 育成7位
ルートインBCリーグ
- 伊藤琉偉選手(新潟アルビレックスBC)
- 東京ヤクルトスワローズ ドラフト5位
- 土生翔太選手(茨城アストロプラネッツ)
- 中日ドラゴンズ ドラフト5位
- 日渡騰輝選手 (茨城アストロプラネッツ)
- 中日ドラゴンズ 育成1位
- 大泉周也選手(福島レッドホープス)
- 福岡ソフトバンクホークス 育成1位
- 尾田剛樹選手(栃木ゴールデンブレーブス)
- 中日ドラゴンズ 育成3位
- 芦田丈飛選手(埼玉武蔵ヒートベアーズ)
- オリックス・バファローズ 育成4位
- 金子功児選手 (埼玉武蔵ヒートベアーズ)
- 埼玉西武ライオンズ 育成4位
- 奥村光一選手(群馬ダイヤモンドペガサス)
- 埼玉西武ライオンズ 育成6位
ヤマエグループ九州アジアリーグ
- 大江海透選手(北九州下関フェニックス)
- オリックス・バファローズ 育成2位
- 川上理偉選手(大分B-リングス)
- 中日ドラゴンズ 育成4位
日本海リーグ
- 大谷輝龍選手(富山GRNサンダーバーズ)
- 千葉ロッテマリーンズ ドラフト2位
- 松原快選手(富山GRNサンダーバーズ)
- 阪神タイガース 育成1位
- 髙野光海選手 (富山GRNサンダーバーズ)
- 千葉ロッテマリーンズ 育成3位
ベイサイドリーグ
- 平山功太選手(千葉スカイセイラーズ)
- 読売ジャイアンツ 育成7位
独立リーグからの指名が増えた理由
なぜ、ここまで独立リーグからのドラフト指名が増えたのでしょうか。背景には、様々な理由が絡み合っています。
社会人野球からのNPB入りに条件がある
社会人野球からNPBに挑戦するためには、2年ないし3年間を社会人野球で過ごさなければなりません。このルールは選手にとって、縛りがきついと感じるケースがあります。というのも、アスリートには怪我や好不調の波がつきものです。
もし、好調なタイミングが社会人1年目で2年目以降、スランプに陥ったらどうでしょうか。NPB入り可能時期のドラフトで指名される可能性は低くなるでしょう。
一方、独立リーグの場合は、NPB入りのステップと考えられているため、独立リーグ1年目でもNPBのドラフト指名を受けることは可能です。
独立リーグの指導者に元NPB選手が多い
独立リーグの指導者に元NPB選手が多いため、NPB球団のスカウトと独立リーグの球団間で密にコミュニケーションが図られます。そのため、選手の情報のキャッチアップがしやすいです。
門戸が広い
高校卒業以降、選手らはNPB入りや大学進学、さらには社会人や独立リーグに挑戦などさまざまなキャリアに分かれます。現在のNPBでは、支配下に加えて育成契約枠を多く設けている球団が増えています。
育成契約であれども、NPB入りを第一にキャリアを考える高校生は少なくありません。一方で、大学側は新入生の囲い込みを早めに行います。実際に、該当選手が高校2年生の頃に目をつけ、3年の春には進路が確定しているケースも少なくないでしょう。
そのため、NPB入りを第一に考える選手にスポーツ推薦枠を活用する大学が減ってしまうのも致し方ない状況です。
厳しい環境下でハングリー精神が養われる
お世辞にも、大学ならびに社会人チームと比較して、独立リーグの練習環境が整っているとはいえません。上手くなってNPB入りして活躍したいと強く思う選手が多い可能性もあるでしょう。
独立リーグの展望
現在、起業家たちが次々と、独立リーグ(球団)の経営に乗り出しています。これは、今後エンターテインメント・興行としてビジネス価値が出てきているということでしょう。
そして、NPB入りを果たす選手も増えてくるでしょう。
余談ですが、独立リーグが発展する一方で、気になるのが社会人野球です。ちなみに、筆者は大の社会人野球好きであり、前職の野球部が強いこともあり数多くの社会人野球を観戦しています。
ここからは筆者の自論です。社会人野球はこれまで会社内でコーポレートスポーツとして位置付けられてきているケースが多いでしょう。そのため、経営体力の状況によっては、社会人野球を存続させない会社まであるとか。
これからは、社会人野球も費用対効果を求められるのではないでしょうか。もちろん、選手も社業に勤しんでいますが、その他でも広告宣伝効果などを数値化して貢献度なども計測されてPDCAを回す流れになるのではないかと想像しています。
皆さまのご意見やお考えなどをご教示いただけますと幸いです。
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