その日に集まったメンバーでチームを組むピックアップゲーム。
草バスケとも呼ばれる参加型のゲームにおいて、誰か審判で笛を吹いてくれる人がいるかいないかで、その日の雰囲気が変わることがある。
「どなたでも、初心者でも参加OKです」とバスケットボールの場を提供してくれる団体の公募には、大抵「ゲーム中の審判などご協力をお願いします」と掲載はあるものの、実際に審判を買って出てくれる方は少ない。
バスケットボールは展開が早く、瞬間的な動きや身体の接触も多いうえルールも細かい為、とにかくジャッジが難しいスポーツである。
動きの激しいスポーツゆえにヒートアップし、審判のジャッジについつい物言いをつけてしまう方も少なくない。
そのため『できるだけやりたくない・・・』という本音を持つ方は多いだろう。
怪我が起こりやすいゲーム
経験者のみが集まったピックアップゲームは、プレーヤーそれぞれがジャッジする目と経験を持っているため、審判がいなかったとしてもファールが起きれば自己申告やプレーヤー内での声掛けで、トラブル少なく試合を進めることができる。
さらに経験者は、身体の使い方が上手なのと、どう接触したら怪我が起きやすいのかも知っているため、怪我は起きにくい。
注意が必要なのは、カムバック、初心者プレーヤーも含まれるゲームである。
プレーヤー自身が気をつけることで怪我をしない、させないことも大切だが、審判がいる事も怪我の予防になる。
怪我無くバスケットボールを楽しむために
初心者プレーヤーは、どのような接触がファールになるのかわからない。
そのため、まったく意図も悪気もなくファールをしてしまうことがある。
ファールをした時、ファールを宣告しなければ同じ接触を繰り返し、相手や自分も怪我をしてしまう。
また、押してしまうなどの通常ファールとは別に、本人は気付かず危険なプレーをしてしまうこともある。
代表的なのは、ディフェンスをしている相手がシュートをした時、着地点に足を入れてしまい捻挫をさせてしまう「アンダーカット」という行為がある。
他にもディフェンスで相手がランニングシュートをして空中に跳んでいる最中に前を横切る行為などがある。
いずれも大怪我をさせてしまう恐れがある行為である。
やはりファールを宣告して本人に認識してもらう他、その日に参加するプレーヤーにも再認識してもらう必要がある。
経験者でもディフェンスで手や腕で相手を押さえつけてしまうことがあるが、特にフットワークが未熟なプレーヤーは、どうしても手が出てしまうことが多い。
カムバックプレーヤーは、ディフェンスで自分が思うようなフットワークができず、身体接触を起こしてしまうことがある。
これらも審判なくファール申告がされないと、プレーのヒートアップにともない、接触が増え怪我やトラブルにつながってしまう。
審判がいることで一線を超えない自重や冷静さを保つことができるのだ。
開催者による審判
開催者が審判を行ってくれることもあるが、開催者が一人でまとめているような場合だと、審判に手が回らないことがある。
審判ができてもコートの中央で遠目となるため、見落としも増えてしまう。
公式戦でないとはいえ、両コートのエンドライン(ゴールに最も近い線)に1人ずつが好ましい。
やはり参加者の協力が必要となる。
雰囲気作りが欠かせない
開催者の方が「審判お願いします」と話しかけても、断られているのを何度も見かけたことがある。
断った方も悪気があるのではなく、経験もない上、ミスジャッジで同じ参加者に何かを言われてしまうことを恐れているのだ。
確かに、私自身も審判を行った時に辛辣な言葉を投げられた経験もあるので理解できる。
多くの場合は部活動や身内のサークルなど仲間内のゲームを通じて審判の経験をスタートするが、審判の経験があっても他人のゲームをジャッジすることに気が重くなるのは当然である。
必要なのは誰でも審判を手伝ってみよう、チャレンジしてみようという雰囲気作りであろう。
そしてこればかりは開催者の頑張りどころである。
チーム分けをした時に、チームごとに審判を1人は手伝ってもらえるよう明確に依頼をする(ここがふわっとしている場合、大抵上手くいっていないのを見てきた)。
審判に慣れていない方が行うこともあるので見落としがあっても大目に見ることなどを、事前にしっかり伝えておくことが重要である。
時に、必要以上の審判への抗議と判断した時はお休みいただく、ということを伝えるのも手である。
そして、経験者はそういった開催者の意図を汲んだ協力やフォローをしながら、その日のバスケットボールを全員で楽しむことに参加をして欲しいと願う。
開催者は電子ホイッスルを準備する必要がでたり、強要はできないし、難しいことではあるが、参加者全員で楽しむ空気を作り、怪我なく終えられればと思う。
楽しい空気は伝染する
審判まで含め参加しやすくするための雰囲気づくりを前述したが、もちろん実践している団体も数多い。
そのような団体が開催するバスケットボールでは、開催者がその団体のコンセプトを熱意を持って伝え、積極的に参加者に声をかけて良い雰囲気を作っている。
そして、初心者や初参加の方が多くても、自然と笑い声や応援、讃えあう声が飛び交い、ハイタッチが至るところで発生し、経験者が初心者に教える光景が見られる。
そのためか、怪我の発生も少ない。
草バスケでも審判を体験することで、バスケットボールのルール知識を深めたり、自分自身のプレーを見直すきっかけにもなる。
近年では、凛とした審判の立ち振る舞いがカッコいいと、審判に興味を持つ方も増えているので、プレーのみならず審判の体験の場にもなればとも思う。
そして初心者の方には、自身がファールをしてしまった時に、何がファールだったのか、なぜファールになったのかを考え、次のプレーや練習にいかしてもらいたい。
その日集まった人々で開催されるバスケットボールであっても、参加者が審判も行いやすい雰囲気づくりを、開催者と参加者が協同で築きあげる意識が広がり、バスケットボールが安心して楽しめるスポーツとして広がればと願う。
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