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【相原ユタカ】ボクの愛した裏サッカー⑦ ~開幕戦の悲劇~
子供の頃、母親ってお客さんが家に来るとやたら部屋を片付けましたよね。で、一緒に片付けろなんて言われて、ボクは“見栄張っちゃって”なんて思ってたもんです。
あれから大人になり、バングラデシュへと旅立ちまして。
Dipali FCってチームと契約することが出来まして。練習会場は毎回団地の空き地や、その他の団地の空き地なのです。“Dipali”ってのがベンガル語で“団地”とか“空き地”って意味なんじゃないかってくらい団地やら空き地で練習ですよ。(ちなみにDipaliの意味はいまだに分かりません。)
そんなある日、護送車のような車に揺られてグラウンドと呼んでいいようなグラウンドでやっと練習ができるようになったんです。牛のフンだらけのそのグラウンドは、犬のフンと牛のフンが混流している団地の空き地よりはボクにとっては張り切りがいがありますよね。
そんなグラウンドでは団地とは違い紅白戦だけじゃなくシュート練習やフォーメーション練習などいろいろ出来るワケですよ。
で、ある日の練習。
ボクがバングラデシュでお世話になりまくってた青年海外協力隊の三田さんっていう、現地の人間にサッカーを指導している人が練習に来てくれまして。
そしたらですよ。
監督さん、“ゲスト三田”の存在に張り切る張り切る。監督さん、指導差し置いて練習参加しちゃってるし。しかも、そんなに上手くないし。
サイドからセンターリングを上げて、中でシュートするって練習をしたんです。
センターリングを上げる人、ユタカ。
シュート打つ人、監督さん&三田さん、って組み合わせ。
ユタカ、センターリング上げる。
監督さん、シュート外す。
もう一回の要求。
ユタカ、センターリング上げる。
監督さんシュート外す。
もう一回の要求。
ユタカ、センターリング上げる。
三田さん、シュート決める。
それでも、もう一回の要求。
要するに、良いトコ見せたかったんですね・・・。
他の選手差し置いてしばし3人だけの練習タイムがありましたもんね。
これが、監督なりの三田さんへのサービス。そしてこれがいつもと違う余所行きのトレーニング。
そして、ボクは文頭の家庭訪問のお母さんを思い出すのでありました。