第60回スーパーボウルを支配したのは、シアトル・シーホークスのディフェンスでした。
試合を作ったのは、RBケネス・ウォーカー3世のランでした。
そしてKジェイソン・マイヤーズはスーパーボウル新記録となる1試合5本のフィールドゴールを決めました。
それでも日本のXで語られていたのは、QBサム・ダーノルドの復活劇でした。
試合を支配したもの
私が不思議に思ったのは、試合後に日本のXを見たとき、トレンドに「ダーノルド」が入っていたことです。
MVPに選ばれたケネス・ウォーカー3世ではありませんでした。
もちろん、ダーノルドは何もしなかったわけではありません。しかしこの試合は「ダーノルドが勝たせた」と言えるような内容だったかというと、QBが勝敗に責任を持つポジションとはいえ、そうは思えませんでした。
ダーノルドの成績
パス成功率は50%、パサーレーティングも74.7。効果的なパスプレーで試合を支配した印象は薄く、むしろ無理をしないことで試合を壊さなかった、という評価のほうが近いと思います。
裏を返せば、それができたからこそ、シーホークスは勝てたのでしょう。ダーノルドは、派手さではなく慎重さで勝ったQBでした。
Xで語られたもの
その一方で、試合を動かしたのはウォーカーでした。近年のスーパーボウルで、ここまで「ランが主役」になった試合はありません。
ウォーカーが残したラッシングの数字は、1998年にMVPを獲得したテレル・デイビスを思い起こさせるものでした。MVPがウォーカーだったことに異論はありません。RBがMVPになったのもその時のデイビス以来です。
MVPと記録
さらに言えば、マイヤーズのことも忘れられません。スーパーボウル新記録となる1試合5本のフィールドゴール。もしウォーカーがいなければ、MVPに選ばれてもおかしくなかった活躍です。
なお、マイヤーズは2018年にニューヨーク・ジェッツでダーノルドとチームメイトでした。そして彼は、ハワイ大学の松沢寛成選手が「最もお手本にしたキッカー」だと語った選手です。
それでも、です。Xで多く語られていたのは、ウォーカーでもマイヤーズでもありませんでした。語られていたのは、サム・ダーノルドの物語でした。
語られた物語
5球団目にして初めてスーパーボウルに勝ったこと。ジェッツ、パンサーズと渡り歩き、一度は「先発失格」の烙印を押されたQBが、ついに頂点に上り詰めたこと。
試合の内容よりも、そこに至るまでの道のりが祝福されたように感じます。
ちなみにアメリカでも、オバマ元大統領がダーノルドの復活劇を、ディフェンスとウォーカーの活躍とともに称える投稿をしています。
下のポストの画像のように、諦めなければ復活できる、そう言っているようにも解釈できます。
スーパーボウルは、勝った瞬間に「その年の物語」を決定してしまう試合なのかもしれないと感じます。
残酷さと優しさ
私は以前、「ダーノルドはプランケットになれるのか」という視点で、このスーパーボウルを見るポイントを書きました。
そして今回、ダーノルドは”なってしまった”のだと思います。
勝てば物語、負ければ記録。スーパーボウルは、そういう残酷さと優しさを同時に持つ舞台です。
この試合の勝者はシーホークスで、MVPはウォーカーでした。マイヤーズは歴史的な記録を残しました。そして試合を支配したのは、シアトルのディフェンスでした。
それでも最後に人々が語り、持ち帰ったのは、サム・ダーノルドの物語だったのです。
スーパーボウルは記録を刻む舞台です。
しかし最後に人の心に残るのは、数字ではなく物語なのだと思います。



