2025年のNFLのドラフトは、4月末に米ウィスコンシン州のグリーンベイ市で行われました。
私が応援しているグリーンベイ・パッカーズのおひざ元で、人口はわずか10万人ほどの街。
北米4大スポーツのフランチャイズで、もっとも小さな街です。
3日間にわたって行われたドラフトで、私が最も印象に残ったのは、
YouTuberのトム・グロッシ氏
が第7巡の指名選手の名前を、3日目に読み上げたことでした。
下の動画の1分過ぎ辺りから入場してくる25番のジャージを着ているのがグロッシ氏です。
グロッシ氏を知らない人にとっては、なにか場違いなお兄ちゃんが壇上に上がってきたぞ、と言う風に見えたでしょう。
ですがパッカーズのファンにとっては、
マジか、あのグロッシさんが指名するのか、
と言う驚きをもって迎えられたと思います。
それは私や、私とお付き合いのある日本のパッカーズファンの方の多くもそうでした。
「6歳の頃からにこのチームのファンになって、グリーンベイに来ることを夢見ていました」
とグロッシ氏は壇上から語りました。
「それが今、今こうしてここにいて、さらにあのステージに上がってドラフト指名を発表する機会を得られるなんて。これは私の残りの人生で決して忘れることのない、大切な記憶になるでしょう。」
そしていよいよチームが選んだ選手を読み上げました。
「NFLドラフト2025、全体237位で、グリーンベイ”愛おしい”パッカーズが指名するのは
ディフェンシブバック(DB)、マイカ・ロビンソン選手。チューレーン大学。」
そのあとは会場
「ゴー、パック、ゴー!!(Go PACK Go!!)」
のパッカーズのチャンテに包まれました。
ファンがドラフトで指名選手を読み上げることは、まったくないことではありません。
2023年にNFLファン・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、会場でサインを求められたほどの有名YouTuberだとは言え、トム・グロッシ氏はあくまでも一般のファンであり、チームの関係者ではありません。
そんないちファンがドラフトで指名選手の名前を読み上げることについて、おおかたの反応は好評でした。
しかし、
「指名選手を読み上げるのは、チームのOBやレジェンドであるべきだ」
「ドラフトはプロフェッショナルによって行われるべきだ」
と言う否定的な意見もありました。
しかしここはグリーンベイ。
NFLで唯一の「市民球団」パッカーズがある地。
肯定的な意見として
「ファンが指名選手を読み上げるのは、パッカーズと言う市民球団らしいことで、チームとファンの距離の近さが感じられてとても良い」
と言うものがありました。
そうです、ここはグリーンベイ。
思えばこのドラフトの初日のオープニングでは、コミッショナーのロジャー・グッデルが自転車で会場に入場して、笑いを誘いました。
これはパッカーズのシーズン前のキャンプでの「風物詩」のオマージュです。
キャンプでは、練習が終わるのを子供たちのファンが、自転車と一緒に待っています。
練習が終わると、選手たちは子供たちが用意した自転車に乗って宿舎に帰ります。
この「風物詩」こそが「市民球団」の証のひとつなのです。

NFLのドラフトは、各チームの本拠地が持ち回りで行われます。
チーム数から単純に考えると、次にグリーンベイでドラフトが行われるのは30年後です。
そんな貴重な機会をグリーンベイとパッカーズはうまくとらえ、「市民球団」の聖地であることをアピールできたのではないか。
そう思った2025年のNFLのドラフトでした。