【高校野球選手権】埼玉大会 川越東があと1人から劇的逆転!強豪・春日部共栄を破る!!

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川越東 6 – 5 春日部共栄

 両校の激しい応援合戦。試合後は球場内から敵味方関係なく惜しみない歓声と拍手が鳴り響く。それがこの試合の内容を物語っている。

 レジデンシャルスタジアム大宮の第1試合は東部地区の強豪・春日部共栄と、前の試合で昨秋関東大会ベスト8の山村学園を破った川越東という実質ベスト16、ベスト8でもおかしくない3回戦屈指の好カードは、強豪校同士の一戦となる。3連休中ということもあり試合前から立ち見の観客が出るなど注目度の高い一戦となった。

 先発は春日部共栄が林 大斗投手(3年)、川越東が右サイドの名取 由晃投手(3年)と両エースが登板し試合が始まる。

 試合はまるで、表裏こそ違えどワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝の日本vsメキシコのような展開。埼玉大会のここまでのベストゲームと言っても過言ではないであろう。前評判通り、両校の意地のぶつかり合いとなった。

 序盤はやや川越東が優勢に試合を進める。川越東は初回、春日部共栄・林の立ち上がりを攻め、先頭の柴﨑 悠里外野手(3年)が初球を捉え中前安打を放つが、続く山中 悠生内野手(3年)が遊ゴロ併殺に倒れると後続も倒れ無得点に終わる。

 川越東は3回にも、この回先頭の芹沢 伸太郎外野手(3年)が中前安打を放ち出塁すると、一死後1番・柴崎が左中間へ二塁打を放ち一死二、三塁とするが、後続が倒れ無得点に終わる。

 先制したのは春日部共栄であった。

 3回、この回先頭の鳥谷越 大成内野手(3年)がチーム初ヒットとなる右中間へ二塁打を放ち出塁すると、続く林がきっちりと送り一死三塁とする。ここで1番・小林 夢行外野手(3年)が右前へポトリと落ちる適時打を放ちまず1点、さらに続く土屋 歩夢外野手(3年)は三振に倒れるがその間に一走・小林が盗塁を決め二死二塁とする。ここで3番・吉野 雄星外野手(3年)が
「甘い変化球を狙っていて、反対方向を狙っていたんですがうまく拾えた」
と、右翼席へ2ラン本塁打を放つなど、春日部共栄はこの回3点を奪い一気に試合の流れをつかむ。

 一気に試合を決めたい春日部共栄は4回にも1死から6番・金田 映栄内野手(3年)が中越えの二塁打を放ち出塁すると、続く一條 泰我内野手(3年)も投手強襲安打を放ち一死一、三塁とする。さらに8番・鳥谷越のところで一走・一條はすぐさま二盗を決め一死二、三塁とチャンスを広げる。

 一方、8番・鳥谷越のカウント1ボール1ストライクというところでこれ以上得点を与えられない川越東ベンチは、ここでエース名取を諦め、2番手・井上 太志投手(3年)をマウンドへ送る。井上は後続をしっかりと抑え追加点を許さず相手の流れを切る。

 一方の川越東は毎回のように走者を出すが一本が出ない。春日部共栄が3対0とリードして試合の前半を終える。

 迎えた6回、川越東は一死から5番・河井 大悟内野手(2年)が左翼線へ二塁打を放ち出塁すると、続く山根 大典内野手(2年)も四球を選び一死一、二塁とする。さらに7番・稲田 匠内野手(3年)も死球で出塁し一死満塁とし、続く芹沢のところで川越東ベンチはバント攻撃を仕掛けるが本塁封殺され失敗に終わる。次の打者は井上投手。川越東はまたしてもチャンスを逸したかと思われたが、井上は右中間へ走者一掃となる適時二塁打を放ち3対3の同点とする。

 ここからは一気に両者得点の奪い合いになる。

 春日部共栄もその裏、一死から5番・髙田 憲志(2年)が右翼席へソロ本塁打を放ち1点を勝ち越す。

 川越東も7回、一死から3番・首藤 諒祐外野手(3年)が左前安打を放ち出塁すると、続く石川 了雅捕手(3年)の捕ゴロが一塁悪送球となり一死一、二塁となる。5番・河井は遊ゴロ併殺かと思われたが、二塁手の一塁送球が悪送球となり4対4とし再度同点とする。

 だが、春日部共栄もその裏、一死から1番・小林が遊ゴロエラーで出塁すると、続く土屋はセーフティー気味の犠打で送り二死二塁とする。ここで3番・吉野が中前適時打を放ち5対4と再度勝ち越しに成功する。これが決勝点になるかと思われた。

 その後、試合は9回を迎え、川越東もの攻撃も二死。だが、ここから劇的な展開が待っていた。

 3番・首藤が右前安打を放ち出塁すると、続く石川も四球を選び二死一、二塁とする。ここで先程エラーをした5番・河井が汚名返上とばかりに左前適時打を放ち同点とすると、続く山根も左前へ適時打を放ち土壇場で逆転に成功する。

 投げては川越東も・井上がその後の春日部共栄の反撃を無得点に抑える。

 結局、川越東もが山村学園に続き、春日部共栄を破り序盤の大きな山場を越え4回戦へ進出した。

 春日部共栄の本多監督は
「気持ちの弱さが出た。全て監督の責任」
と、試合後に嘆いたが、この試合を物にすれば上位進出が見えてくる状況だっただけに、ここでの敗戦は痛恨であろう。勝負所で出たエラーが最後まで大きく響いた形だ。この日も2HRと打線は一応に振れていた。ただし、今大会4番・伊藤の調子が上がらずこの日も無安打3三振で大会を去った。林も最後まで良く投げたがこの日は総じて球が高かった。

 林は
「今日は球も高くて、暑くて。特に後半下半身がしんどかったですが、自分が投げ切るという気持ちで投げた。最後は野球の怖さを感じた。今日の悔しさを上のレベルでも生かしたい」
と、この日の敗戦を糧に上のステージでのリベンジを誓った。投打のポテンシャルを考えるとここでの敗戦は想定外であろう。髙田や平尾など好選手はいるだけに夏はいま一度鍛え直し、秋以降の反攻に期待したい。

 一方、川越東の野中監督は
「選手が私を乗り越えた試合。秋春負けた意地が出た。夏でなければこういう展開は捲れない。春負けたのは私のせいと選手達に話し、自分にベクトルを向けてもう一度やり直した。その後5、6月の練習試合の内容が良かったので続けていこうと。今大会のラッキーボーイについて私は井上、河井と考えていて、河井にはエラーを取り返せよと伝えていた」
と、劇的な展開に思わず興奮して振り返りつつ、
「おいっ、学校返って練習だぞ!」
と、試合直後に選手達へ発破をかけ、先を見据えた。

 対照的だったのはこの日のヒーロー井上である。前の山村学園戦でも書いたが春の大会前後までCチームの投手。それでも自身が認められるきっかけとなった打撃投手での投球を、その後練習試合での好投するようになっても、自分の投球練習、自主練習の他にルーティーンとして6月末まで続けたという。

 「あのタイミングで行くとは思っていなかった。足も震えていましたが、前の試合も同じような形でマウンドに上がったのでマウンドでは少しは楽に臨めた。バッティングピッチャーの件は後悔したくなかったのでこの姿を思い描いてやれることを全部やろうと。今日は変化球を狙われたので最後は直球で押した」
と井上は終始落ち着いた口ぶりで振り返った。これまで目立つ存在でなかった選手が地道に努力を続けた結果、現在はチームの浮沈を左右する存在になっている。

 山村学園、春日部共栄、川越東の中でハイレベルな潰し合いを乗り越えた川越東は、この連勝で大きな自信と勢いを手に入れたはずだ。台風の目になり得る存在に今後も注目だ。

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この記事を書いた人

南 英博のアバター 南 英博 ULTRA SPORTS 編集長

世界初のクラウド型スポーツメディアである「ULTRA SPORTS 」WEB版の編集長に就任。当サイトはアスリートのセカンドキャリアを応援し、将来的に様々な競技の参加者同士が自由に交流できるプラットフォームとすべく日々奮闘中。ライターとしての顔も持つ。フットサル、高校野球の取材経験あり。高校野球は主に埼玉担当。

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