【高校野球】埼玉大会 壮絶な一戦の末、花咲徳栄が決勝へ!昌平は完全制覇ならず

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花咲徳栄 7 – 6 昌平

試合直後に拍手が鳴り止まない県営大宮球場。3時間34分の死闘は壮絶な展開となった。

いよいよ準決勝。埼玉大会は佳境を迎える。県営大宮球場の第1試合は「完全制覇」を目指す昨秋、今春の王者、Aシード・昌平と、 今大会ここまで全試合コールドで勝ち上がった優勝候補・花咲徳栄の対戦。

先発は昌平が左腕・渡邊 俊輔投手(3年)、花咲徳栄が木田 康介投手(3年)と両エースが登板し試合が始まる。

試合序盤、ペースを握ったのは昌平であった。

昌平は初回、花咲徳栄・木田の立ち上がりを攻め、一死から2番・金子 晄也内野手(3年)が左中間へ二塁打を放ち出塁すると、二死後、4番・齋藤 陽貴捕手(3年)の一ゴロが相手エラーを誘い昌平が1点を先制する。

花咲徳栄もすぐに反撃を開始する。2回、この回先頭の齊藤 海外野手(3年)が三塁線を破る二塁打を放ち出塁すると、続く柴田 樹捕手(3年)がきっちりと送り一死三塁とする。ここで8番・木田の一ゴロに対し、三走・齊藤がゴロGOで本塁生還。すぐに同点とする。

だが、昌平はその裏、一死から7番・渡辺 暁斗内野手(2年)が中前安打を放ち出塁すると、続く櫻井 ユウヤ内野手(1年)が三塁線を破る二塁打を放ち一死二、三塁とする。9番・渡邊俊のところでまず暴投で1点、さらに次の1球、昌平ベンチはスクイズを選択すると、これを渡邊俊がきっちりと決め3対1とする。

一方の花咲徳栄も3回、一死から3番・石塚 裕惺内野手(2年)は
「狙っていなかったですが入ってきた変化球を反応で。本来左投手のアウトコースへの変化球は甘くなりなかなか練習できないので対策を立てた」
と、左翼席へソロ本塁打を放ち1点差とする。このあたりは岩井監督が前日述べていた「喰らいついていく」という状況であろう。

そして、打順が3巡目を迎えた5回、いわゆる「トクハルの3巡目」だ。花咲徳栄打線が昌平・渡邊俊に襲いかかる。

先頭の田中 辰空内野手(3年)が左前安打を放ち出塁すると、続く生田目 奏外野手(2年)のところで花咲徳栄ベンチはエンドランを仕掛けるが、生田目は一直併殺に倒れる。それでも、岩井監督は笑顔であった。二死から3番・石塚が投手強襲安打を放ち再度チャンスメークすると、続く小野 勝利内野手(3年)が四球を選び二死一、二塁とする。ここで5番・増田 空内野手(3年)が左前適時打を放ちまず1点、さらに、続く齊藤も一塁線を破る2点適時二塁打を放ち、この回一挙3点を奪い5対3と逆転に成功する。

中盤は花咲徳栄ペースとなる。

4巡目を迎えた花咲徳栄は6回にも、一死から田中が捕手への内野安打で出塁すると、続く生田目のところで花咲徳栄ベンチはエンドランを仕掛ける。これが内野安打となり一死一、二塁とチャンスが広がる。昌平ベンチはここでエース渡邊俊を諦め、2番手に青沼 大雅投手(3年)をマウンドへ送る。だが、青沼はストライクが入らず3番・石塚に四球を与え一死満塁とすると、昌平ベンチは早くも青沼を諦め、3番手に2年生左腕の石井 晴翔投手をマウンドへ送る。この辺りは昌平ベンチもスクランブル継投だ。石井は後続を抑え無得点に終わる。

花咲徳栄は7回、昌平の3番手・石井に対し、この回先頭の増田が中前安打を放ち出塁すると、続く齊藤も死球で出塁し無死一、二塁とする。昌平ベンチはここで3番手・石井を諦め最速140キロ左腕・山根 大翔投手(2年)を中堅手からマウンドへ送る。花咲徳栄は7番・柴田がきっちりと送り1死三塁とすると、続く木田のところで今度は花咲徳栄ベンチがスクイズを仕掛ける。木田がこれをきっちりと決め3点差をつける。

投げては花咲徳栄・木田が3回以降立ち直る。これで花咲徳栄がその後もペースと握ると思われた。

だが、ここから地力のある昌平が脅威の追い上げを見せる。

昌平はその裏、この回先頭の酒井 啓多外野手(3年)が右前安打を放ち出塁すると、一死後2番・金子も右前安打を放ち、一死一、二塁とする。二死後、千両役者が仕事をする。4番・齋藤が右中間へ2点適時三塁打を放ち6対5、一気に1点差と迫る。

昌平は、8回にも、この回先頭の山根が右前安打を放ち出塁すると、続く渡辺暁も死球で出塁し無死一、二塁とする。ここでピンチバンター・山本 俊介内野手(3年)がきっちりと送り一死二、三塁とする。
「上原は8回の頭から行かせるべきだった、あそこは継投がやや遅れた」
と、岩井監督も試合後反省していたが、これにはたまらず、花咲徳栄ベンチもエース木田を諦め、最速143キロの2年生右腕・上原 堆我投手をマウンドへ送る。

対する昌平ベンチは、2人目の代打の野島 樟外野手(3年)を送る。野島のところでセーフティースクイズを仕掛けるがこれが失敗に終わると後続も凡退し無失点で終わる。

すると、花咲徳栄は最終回一死から公式戦初打席、好リリーフを見せた上原が自ら左翼席へ値千金のソロ本塁打を放ち7対5とする。

このままでは終われない昌平もその裏、この回先頭の金子が四球で出塁すると、続く小林 驍汰内野手(3年)も右前安打を放ち無死一、三塁とする。だが、頼みの主砲・齋藤が凡退するなど二死となる。それでも二死後、今大会これまで10割の代打・園田 耀大捕手(2年)が左前適時打を放ち1点差まで追い上げるが反撃もここまで。

結局、花咲徳栄が7対6で昌平との壮絶な打ち合いを制し、決勝へ駒を進めた。

昌平は、
「元々渡邊俊だったら花咲(徳栄)打線を抑えられるかなと思って行かせました。その後は山根で。7回くらいまで持ってくれたらと思っていましたが、アクシデントもあり山根の前に他の投手を繋いだ。打線は底力を見せてくれましたが、8回にセーフティースクイズのミスもあり同点に追いつけなかったのが大きかった。埼玉で夏を勝つには花咲、浦学(浦和学院)この2つを倒さないと価値もないし頂点に立てないと思うので今日は勝負だったんですが。そこに勝てなかったのは私も含めて力不足。上原君のホームランは想定外でした」
と黒坂監督。佐藤立が前日登板の影響もあり、先発に渡邊俊を立て、後半山根という青写真を描いていた。一番良い投手を最初に出しただけに、もし渡邊俊が7回くらいまで投げられれば先は見えたであろう。だが、相手打線がそうはさせてくれなかった。6回以降スクランブル継投で何とか山根まで繋いだが、8回に追いつけなかった場面と上原に浴びた一発が想定外であった。これで大黒柱・齋藤に金子、渡邊俊など役者が揃った昌平の夏が終わる。「完全制覇」という埼玉で大変難しい偉業を狙いプレッシャーも大きかったはず。まずはそこへ立ち向かった選手たちに賛辞を送りたい。

そして、非常に頭の回転が早く、クレバーで時には選手達を叱る。投手交代にも関わるまさにピッチ上の監督であった齋藤。U-18候補にも選ばれた彼の大学での活躍にも期待したい。幸い佐藤 立羽投手(2年)、山根、櫻井、石井など1、2年生にも好素材は多い。彼らが残る昌平は秋以降も脅威であり注視すべき存在だ。

一方の花咲徳栄は、
「渡邊君に対しては開かずに反対方向という指示を出していた。5回は渡邊君の表情とか動きなどを見ていてしんどそうだったので、バテてきたところをと思っていたんですけど、あそこは上手く打ってくれました。木田も徐々に安定してきて0に抑える回も出てきたんですが流石に終盤バテました。上原は最後自分のスピードボールで勝負できたので良かったです。ホームランはちょうど振ったところに球が来たんじゃないかな(笑い)。あの1点が大きかった。前半はミスして苦労していたけど、後半良いことがあるんじゃないかと。後半はうちのゲームでした。序盤ミスで点を取られましたけど、後半勝負ができるチームでないと夏は勝てないと選手には言っている。柴田とは昨日話し合って相手の打線が良いので覚悟を決めろと。前半は大事に入って後半インコース勝負。相手は一番良い思いをしているチームで、うちは一番辛い思いをしてきたチームなので、良い戦いができて良かったです」
と岩井監督はしてやったり。序盤は守備やバッテリーが乱れらしくない戦い方であったが、中盤以降底力を見せた。そして、最後は意外な男の一発が勝敗を分ける形となった。

これで夏の決勝は4年ぶりとなる。決勝の相手は浦和学院である。埼玉をリードしてきた2強、花咲徳栄と浦和学院。秋や春はこれだけ戦ってきているが、実はこの2校が決勝で相見えるのは今回が2回目と少ない。前回の第99回大会は花咲徳栄は清水、西川、綱脇ら、浦和学院も蛭間、渡邉、佐野などを擁し強烈な対戦になったことを思い出す。ちなみに花咲徳栄はその後全国制覇したが、今回はどんな対戦となるか。

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南 英博のアバター 南 英博 ULTRA SPORTS 編集長

世界初のクラウド型スポーツメディアである「ULTRA SPORTS 」WEB版の編集長に就任。当サイトはアスリートのセカンドキャリアを応援し、将来的に様々な競技の参加者同士が自由に交流できるプラットフォームとすべく日々奮闘中。ライターとしての顔も持つ。フットサル、高校野球の取材経験あり。高校野球は主に埼玉担当。

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