ハワイ大学で、NFL入りを本気で目指す日本人キッカーがいます。
名前は松澤寛政です。
2024年シーズン、正キッカーに定着すると、フィールドゴールは16本中12本を成功させ、トライ・フォー・ポイント(PAT)は32本すべてを決め、抜群の安定感を示しました。
フレスノ州立大学戦では、残り15秒で逆転となる決勝フィールドゴールを沈め、勝利の立役者となりました。
そして迎えた今シーズン。初戦では名門ノートルダム大学を相手に決勝FGを決め、フレスノ州立大戦では自己最長となる52ヤードを成功させました。
少なくとも私にとっては、松澤選手は昨シーズンすい星のようにNCAA界に現れた存在です。その軌跡を知ると、まるで彼が高校時代に親しんだサッカーの“カウンター攻撃”のように思えます。
松澤選手は大学進学後もサッカーを続けるつもりでしたが、受験は失敗続きでした。
将来が閉ざされかけたとき、父親は「日本の外で起きていることを、自分の目で見てきなさい」とだけ言って、アメリカ行きの往復チケットを手渡してくれました。
渡米後に観戦したNFLの試合で、松澤選手の人生は一変します。
「NFLの選手になりたい」——20歳の彼の胸に火が灯った瞬間でした。
もちろんその挑戦はゼロからの出発でした。
周囲に指導者はおらず、彼はYouTubeを頼りに独学でキックを磨くしかありませんでした。
そしてオハイオの小さなカレッジへ。しかし思うように結果を残せず、思い描いた舞台からは遠く離れていました。
何度も壁にぶつかりながらも努力を重ね、ついに20代半ばでNCAAの強豪ハワイ大学の正キッカーの座をつかみ取りました。
私の考えが間違っていなければ、早ければ来シーズンにも松澤はNFLのフィールドに立っているかもしれません。
ドラフトで指名される可能性もあれば、ドラフト外でキャンプに招かれる道もあります。
あるいは最近トレンドになっている、UFLという育成リーグからのジャンプアップ。
どんな形でもいいので、とにかく松澤にはNFLでプレイしてほしいと期待しています。
ひとつ気になるのは、彼が今キッカーというポジションをどう感じているかです。
以前も書きましたが、キッカーは「アメリカで一番やりたくない仕事」とまで揶揄されるほどプレッシャーの大きいポジションです。
それでも彼の中で「NFLでプレイしたい」という気持ちは揺らいでいないのでしょうか。
少なくとも、安定して成績を残し続けている姿を見る限り、その心配は杞憂だと感じます。
松澤寛政の挑戦は続いています。
日本人NFL選手の誕生を、心から願っています。



