【陸上】塩尻和也含め3名が日本新!男女10000m日本選手権結果!

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男女ともに参加標準記録に肉薄!電子ペーサーと記録の因果は?

先日、国立競技場で行われた男女の10000m日本選手権。ウルスポ・ナビゲーターでもあるこにわ氏が大会のフロアMCを務めたということもあり国立競技場にウルスポが潜入。今大会で優勝しパリ五輪参加標準記録を突破するとその場で日本代表に内定する重要な一戦。さらに今大会は日本選手権男女1万メートルで、ダイヤモンドリーグをはじめ、さまざまな国際大会で使用されている「光のペースメーカー」と言われる電子ペーサー(ウェーブライト)が初めて導入される記念すべき日本選手権となった。それがどのような影響を及ぼすのか。注目が集まる。

まずは女子10000m。
オープン参加となったジェプングティチ ジュディと五島莉乃が積極的にレースを引っ張り、その後ろを廣中璃梨佳、高島由香、木村友香らで上位集団が形成される。

レースは5000m前後で一旦廣中が一気に仕掛ける。だが、突き放すには至らず集団に飲み込まれる。

その後木村と小海遥が入れ替わる。迎えた残り1周、五島と廣中がスパートしデットヒート。最後は廣中が突き放し30分55秒29で優勝。大会3連覇を飾った。2位以下も35歳の高島が30分57秒26、3位の小海が30分57秒67、4位の五島が30分58秒83と、日本歴代6~8位の好タイムであった。小海はこれまでの自己ベストが32分01秒83。大幅な自己ベスト更新となった。

「クイーンズ駅伝後ということもあり、練習もうまくいかなくて正直どこまで行けるかという感じだったが自分の力を最大限発揮しようと思っていたので力は発揮できたかなと思います。31分10秒のペーシングライトに着くという話を監督としていて、自己ベストからすると早いペースでしたが、腹を括って行ける所まで行こうという話になった。最初ライトがどれかわからなかったが、だんだん前の人とも追いついてきて自分らしいレースだったかなと。しんどかったですが4人だったので、メダルをもらえるかもらえないかの所だったんですけど、勝つってこともあったんですが最後まで発揮しようと思えたのが良かった。アジア選手権が終わってからうまくいっていなくて。アジア大会前に右膝下の怪我をして治ったと思ったら今度は左を怪我して。うまくいかないなって思っていたんですが第一生命のスタッフが丁寧にここまで上げてくれたのでそこが大きかった。練習の中で自分の弱い所が見つかっているので来年は克服して自分の力を上げていけたら。31分10秒のライトは緑って聞いていたんですが、白があって混乱した。4人になって揺さぶりをかけられたんですが、耐えられた。最低で自己ベスト。31分10秒にどれだけくらいつけるか。大幅な自己ベスト更新に上半期よりは力がついているなというモチベーションにはなった。パリの参加標準も狙えなくはないと監督と話しましたが、練習過程では無理だという話になっていたので相談して決めたい。ゴール後は自分の力を出せてクイーンズと10000mと2つ山があったので解放された気分。来年に向けペースの上がり下がりで対応し切れなかったので長い距離ハーフとかで磨いていきたい。今年1番の10000mにはできたかなと」(小海)

「故障しない体作りとスピード強化。これまで足を痛めそうなガムシャラに動かすようなフォームだったので、上下を連動させるようなフォームへ改造した。自己ベストと3位までに入ることだけを考えて。廣中さんがいるなあと思っていてラストじゃ敵わないので3番で。表彰台に立つのは2015年の日本選手権以来。引っ張ってくれる人だけを考えて、ジュディーがいたので練習を思い出しながら走りました。3人で走れたらいいなあって。ペーシングライトは全然気になりませんでした。赤が遠いなあくらい。緑の後ろにいたので勢いがあるなあと」(高島)

「男子の日本新記録を見て興奮している。3連覇できて嬉しい。3連戦乗り越えられて良かったです。走りやすい天候でした。自分も後半5000m行き切る力をもっとつけたいなと。駅伝の時にラストがキツくなってなかなかスパートをかけられなかったことがあったので、この2週間は日体大記録会でもラストでキツくなってもスパートをかける意識で練習してきたのでスパートはかけられたかなと思います。ラスト5000mがキツくなる所でもあるし、勝負所でもあるので、自分でペースを刻みながら行きたいという気持ちはあったんですが、そこがまだ行き切れなかったので、今後スピードや持久力は強化すべき所かなと。標準記録越えのタイムに挑戦したいという気持ちはあったんですが、最初の5000mで突っ込んでラスト5000mでキツくなるよりかは、周りの選手のペースを借りつつ、重きを(残り)5000mに置いたという感じです。周りの選手よりレースは出ているので経験値として、タイムは自己ベストを出す上でまだまだ不十分な面もあるんですが、今季シーズンベストの30分台を出せたのは自信になった。ただ、パリ五輪はレベルが上がりますので、世界陸上では標準記録を切れなくてもランキングで拾われた部分もあったんですが、五輪はそう簡単にはいかないと思うので、冬季に練習を積んでスピードを磨きながら、5000m、10000mどちらも対応できるような強さを磨いていきたい。冷静に考えてやってきたスパートに自信を持って、つきながらスパートをかける気持ちはありました。スタミナはついてきたので、スピードや持久力を海外での練習を含めどう練習するかを監督と話し合ってやってきたい。今日のレースだと最初の5000mでもっと楽に行きたいが、まだ余裕がないので余裕度をもっと欲しい。日体大記録会のようなレースだと3000m以降は良いけどそれまでは硬かったりっていうのが続いているので、最初からスピードを出して行ける力をつけていきたい。半年後の日本選手権は後半の5000mで自分の力で行けるようにスタミナもありつつ、スピード、持久力も高めつつ、ラストのスパートもできる3段階の要素が武器になるよう強化してやっていきたい。ペーシングライトを意識してそこを目掛けてできたので見やすいし今後もつけて欲しい」(廣中)

次は男子10000m。序盤はオープン参加のシトニック キプロノを筆頭に伊藤達彦、清水歓太に太田智樹、田澤廉のトヨタ勢がレースを引っ張り、小林歩、塩尻和也、相澤晃らで10人ほどの上位集団が形成される。

一定のペースで迎えた終盤、スパートをかけたキプロノに塩尻がついていきそのままスパート。結果は日本新記録となる27分09秒80で優勝。惜しくも参加標準記録の27分00秒を切れずパリ五輪代表内定は持ち越しとなったが立派な記録だ。27分12秒53で2位の太田、27分13秒04で3位の相澤もこれまでの日本記録を上回るタイムと記録尽くめの大会となった。

「日本選手権に向けて集中して頑張れれば。怪我の影響はないです。少しでも塩尻さんとの差を埋めることができるよう体調管理はもちろん実力をつけていきたい。日本記録保持者ではなくなるのでこれからは挑戦者として塩尻さんや太田、田澤、伊藤選手に負けないように頑張りたい。初めて日本記録を出した時は出てしまったような記録だったので、今回は実力を出し切れたかなと。練習もそうですし陸上と向き合えるようになった所が成長した所かなと。大学からあまりトラックで走ってこなかったんで、チームの先輩からアドバイスをもらって調整を見直して、トレーナーから論文などを教えていただいて、テーパリングで自分に合うものを見つけて今回良い結果を残したので次もこれを基本にレースに臨めたら。前で走る余裕がなかったので前回の日本選手権では前で走れるように塩尻さんとの差を埋めて前の方でレースを展開したい」(相澤)

「27分33秒は切れるだろうと思っていた。そのタイミングが今日だった。26分台を出せるという自信はないですが、確実に近づいてはきている。ちょっとずつでもいいんでまた結果を出せれば。正直ここまでタイムが出るとは思っていなくて順位も2位ということで負けてはしまったんですがやり切った部分もある。ただ、ゴールデンゲームズでも負けて今回も負けてしまったので次は勝負を仕掛けていきたい。ちょっと前までは不安もあったが今回の結果で自信にもなったし遠い目標ではなくなったので狙えるうちは狙いたい。もう一度、すべてレベルアップしていきます」(太田)

「今日のレースは事前にイメージしていた通り終盤8000m以降までしっかり集団について8000m以降に勝負所で前に出られるようにということを意識してレースに臨んでその結果通りに走れて、タイムとしても日本新記録で走れて。タイム、レース共に良い結果で走れた。11月頭の東日本の実業団駅伝後、チームの練習から離れて、10000mに臨んだ。ニューイヤーに向けて持久的な練習が増えてくるんですけど、そこにスピードを意識した練習を加えて取り組んできて、練習でも良いタイムが出ていた。順調な練習ができてこの日本選手権に臨めた。来年のパリに向けて大きな位置付けとなるレースだったので、しっかり勝ち切ってポイントを稼げたのは良かった。東京五輪では悔しい結果で出場ができず、世界陸上でも悔しさの残るレースだったので、来年のパリ五輪に出場して内容としても良い結果で終えられるように今後も取り組んでいきたい。自分も監督には言っていないんですが3000mに未練はあって(笑)。東京五輪などもあり2年走れず消化不良で終わっているので。走りたいという気持ちがあるんですが、僕自身は学生の時から10000m、5000m、3000m障害とどの種目でも勝っていきたいと思って競技に取り組んできたので。今後3000m障害に取り組むかは分かりませんが、今の経験は今後3000m障害を走るとなった時に無駄にはならないかなと。ただ今はパリへ向け一番結果の出た10000mに力を取り組んでいければ。電子ペーサー自体は初めての経験ではなくて、レースでも先頭争いの中盤で光を見て走る感じではなかったんですが、目安としては分かりやすいですしいいかなとは思います。うまく走れている時はいいんですが、後半キツくなった時にペーサーが早くなっている印象があって、今後のレースでも採用してもらえると嬉しい。記録の面では海外にもっと良いタイムの選手がいますし、国内で勝つのはもちろん、海外のレースでも勝っていけるように、今年の悔しい経験をパリ五輪で出場できた時に活かしていけたら。具体的には決まっておりませんが監督とも相談して海外のレースも視野に入れながらより良い選択をできたら。学生の時に比べたらどの種目もという訳にはいかないですが、気持ちの上ではどのレースもと思っているのですが、一つ一つ相談して目の前のレースで全力を尽くしていきたい。10000m、5000m、3000m障害全てのレースで頑張りたい。駅伝に関しては自分が主力という考え方でなく、どの選手が走っても強いと思っているので、自分が走らなきゃというよりは、日々の練習でしっかりアピールしてメンバーに入ってチームを代表して走りたい。27分45秒ということで大幅upとなったんですが、元々国内外でも10000mのタイムの水準が上がっており、先日佐藤選手の27分28秒という記録を見ていて、全体的に10000mのレベルが上がっている中で日本記録も更新できない記録ではないということを周りの雰囲気で感じていて、27分9秒は記録としてよく出たなと大きく更新できたなと思っているが、海外に目を向ければ五輪の標準記録が27分0となっていて、国内のレベルで考えると高い記録ではあるがそこを更新しなければと思っているので。個人として自己ベストを出して嬉しいんですが、参加標準記録を突破しなければ国際レースでの勝負は難しい。明日から今以上のタイムを目指してやっていきたい。27分を切るには5000m13分30秒のスピードが必要。その上で5000mの倍である10000mを走るスタミナも必要なのでどちらも融合したような練習が必要。その練習は誰もが取り入れているので、それを当たり前のようにできるかが大切」(塩尻)

「レース前から調子が良いなってことは手応えとして掴んでいて、うまく行けば27分20秒ぐらい出ればと思っていたが、それ以上の結果が出てよく頑張ってくれた。春先からずっと好調を維持していて、故障させてしまったらもったいないので、練習ではあまり追い込みすぎないようにということを意識してやってきた。練習で自らを追い込みすぎて潰れてしまう部分があるので腹八分目で。3000m障害も強かったんですが、細かいハードリングを見ていると向いていないのかなと(笑)。普通に走力はある子なので5000m、10000mでも世界は十分狙えると。何より本人には言っていませんが、2019年に3000m障害で膝の大怪我をしたことがあって3000m障害を辞めて欲しいなと。ケガをされてしまうと困ってしまうので騙し騙しフラットなレースへ持っていった所。こういう選手が抜けてしまうと駅伝で予選落ちをしたりということがあったので。チームとしては大黒柱と思っているのですが、見ての通りフワッとした子なので、頼むぞやれよと言わなくても調子さえ整えてくれれば結果を出してくれる子なのでいつも通りねと言っている。黙っていても頑張ってくれる選手なので駅伝でも普通に走ってくれれば。私は彼自身のペースを崩さないことだと思っている。塩尻は海外が好きではなくこれまでも高地トレーニングもしてこなかった。大事なのは練習を継続させていかないとダメかなと。ここぞという時に力を発揮できる選手なので」(高橋監督)

最後に高岡SDが今大会を総括した。

「日本選手権10000mで選手達が期待通り、期待以上の結果を出してくれて嬉しく思っている。多くの選手がパリに向けて大きく近づいたと感じている。記録の面、順位のポイントの面と合わせて前進したと感じている。女子は世界選手権で8位入賞をしている廣中さんを軸にといった所はあったが、複数の選手が廣中さんへ挑戦する姿であったり、外国人選手と競う中で上位の選手が自己新記録を出したことや最後の競り合いには見応えがあった。ここは男子もそうですが、世界と戦う中で必要な要素である。男子も女子同様に速い展開になったんですが、田澤選手を含め、核となる選手が良い形でレースが進んだと思っている。当然ペーシングライトの力が多少なりあったと思いますが、それ以上に前を走る選手達が頼もしく感じましたし、最後の競り合いも女子同様に勝負する上で必要な部分ですし、良い駆け引きができたレースだったと思っている。当然ここまで記録を伸ばせたことは良かったことで、気温などコンディションの問題やライバル、多くの観客が来たことも記録が出た要因ではと思っている。ライバルが近くにいることとライバルには負けたくないという気持ちから3人の日本新記録が生まれたではと思っている。今回も塩尻選手は良かったですが、2位以下の選手は悔しさを胸に秘めている。次のレースへの力になってくると思いますし、塩尻選手が日本記録は超えるだろうと思っているということは、皆もそういう気持ちになっているということがより大きな記録更新の要因になっていると思う。次回大会は記録もそうですが気温も含めた準備が大事。その中で選手に合ったレース展開にできればと思っていますし、順位も必要になる中でさらにレベルの高いせめぎ合いを期待したい。ペーシングライトは国内のレースでも多く使用されるようになり、ダイヤモンドリーグを始め各大会でペーシングライトの力をホクレン・ディスタンスを通じて感じていた。日本選手権という場でありますが、記録に対して執着して欲しいということで導入に至りました。現段階では今日の状況を見て判断したい。ペーシングライトが必ず追い風になるとは言い切れない。設定する難しさを感じている。順位も大切になってくるので今後は結果を見て判断していきたい。世界選手権から標準記録も上がっているので簡単に標準記録突破とはいかないと思っていた。ただ今回のレースはコンディションが整ったとはいえ記録は世界9位に相当する。そこは選手も我々も自信を持って。この記録を受け次は26分台という考えを持った選手が増えますので、そこを目指すことが日本の選手達に大きくプラスに働く。ブダペストの世界陸上では突破できているタイムですし、勝負できるという気持ちに変わっていくはず。強化としてはレースの設定含めて研修合宿等選手にとってプラスになるようなことを強化費を使いやっていきたい」(高岡SD)

とのこと、ペーシングライトに関しては概ね好意的な意見が多かった。日本新記録や自己ベスト記録が多く生まれたこととペーシングライト活用の効果は少なからずあるはず。今後も公式戦での活用を期待したいが日本陸連がどういう判断を下すのか。注視したい。

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この記事を書いた人

南 英博のアバター 南 英博 ULTRA SPORTS 編集長

世界初のクラウド型スポーツメディアである「ULTRA SPORTS 」WEB版の編集長に就任。当サイトはアスリートのセカンドキャリアを応援し、将来的に様々な競技の参加者同士が自由に交流できるプラットフォームとすべく日々奮闘中。ライターとしての顔も持つ。フットサル、高校野球の取材経験あり。高校野球は主に埼玉担当。

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